弱者が楽しく生きる世界を、代理店を活用してつくりたい
澤田:そうなんですよ。信号を渡るときに車の走行音が5秒以上してないから、今はきっと青だろうという勘で渡ってるんですね。
権八:え、マジですか。でもだからこそ都内だと音が鳴る信号が増えてるのかな。
澤田:いえ、あまり増えてないのと、近隣の迷惑になるから22時以降はたいてい鳴らないんです。そう考えたとき、これはちょっとしたテクノロジーで解決できるなと思って、肩に乗せる忍者ロボットの「NIN_NIN」をオリィ研究所と開発しました。
ロボットにマイク、スピーカー、バッテリーを内蔵していて、遠隔から操作します。たとえば寝たきりの人が病室からモニター越しで、視覚障害者の肩に乗った忍者ロボットの中に憑依して、「今は信号が青だよ」とシンプルな技術で伝えるという。これは視覚障害者起点でつくってるんですけど、今はインバウンド軸でもニーズがあって、観光ガイドとして使いたいと。
澤本:なるほど。
澤田:つまり、さっきのライター、ストロー現象が起こってるということなんです。
澤本:肩にずっと乗ってるの?
澤田:そうです。肩に乗せて、かわいいんですよ。お尻がぷりっとしていて。
権八:ニンニン。これは忍者ハットリくんから来てるんですかね。
中村:このロボットをつくってる人を知ってるんだけど、すごく変わった子ですよ(笑)。澤田さんと気が合いそう。
澤田:代理店は強い人をもっと強くするみたいなことが多いじゃないですか。代理店に仕事を依頼できるぐらいなんで、その企業は売上的にもある程度ないと。でも、広告代理店力、広告力を生かして、今、マイノリティと呼ばれている人達をマジョリティにしていくことのほうが、マイノリティの自分には合ってるなと。なので、どんどんそっちにスライドしている感じですね。
中村:義足女性が美しく見えるというのは、広告クリエイティブと通ずることがあるように思うのは私だけでしょうか。
権八:いやいや、その通りじゃない?
澤本:澤田くんは電通に入って、しばらくはクリエイティブだったんですか?
澤田:そうですね。コピーライターとCMプランナーを20代の頃はやっていて、鳴かず飛ばずだったので、あるときからR25という当時あったフリーペーパーで『キメゾー』というマンガの連載をはじめたんです。要は広告以外のことで何か旗を立てたいと思って。
権八:あ、『キメゾー』を描いてた人なの?あれ面白いよね。
澤田:そうです。絵は別の仲間が描いてたんですけど。『キメゾー』もブレイク前夜と言われて6年ぐらい経って、ブレイクしないで終わっちゃったんです。それでどうしようかなと。実は僕、息子がいるんですけど、彼が障害を持っていて、先天的に全盲なんですよ。
僕は彼が生まれた頃にCMの作業をいっぱいしてたんですけど、彼は目が見えないということは、親父の仕事が見えないじゃないかと気づいちゃったんです。編集作業でCGにこだわったりするけど、息子からすると、それじゃ世界は変わらないなと。
そこから自分の仕事はどうあるべきか、どう代理店と向き合うかを再定義して、いろいろな障害のある人と出会っていき、僕らが楽しく生きる世界を代理店を活用してつくろうということにどんどんシフトしていったんです。だから父としてやっているという部分もあります。
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