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答えのない「問い」は、創造的コミュニケーションを生む触媒【安斎勇樹×前田考歩 後編】

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勝利条件の更新によって、プランのイメージも変化する

前田:プロマネの場合は発問に近いかもしれません。かつては、リーダーシップを発揮して、「自分はこういう考えなんだ」とチームを引っ張っていくのが、よき上司でありマネージャーの姿でしたが、近頃そういう考え方は通用しなくなってきました。プロジェクトの未知度が高くなればなるほど、確信を持ち、強いリーダーシップを発揮してチームメンバーを引っ張っていくことは難しくなります。

であるなら、プロマネはプロジェクトメンバーに問いかけながら進めていくことが求められるのだと思いますが、そのための方法論があまり見当たらず、メンバーに問うことができない人が多いと思います。質問、発問、問いのお話は、これからのプロマネに求められる資質として、すごく大事ではないかと感じました。

安斎:心理学の言葉に、「曖昧さ耐性」という言葉があるんです。白黒つかない状態になった時に、どれくらいストレスを感じるか。それが曖昧さ耐性です。耐性がないと、曖昧な状況に耐えられません。逆に耐性が強いと、曖昧な状況を、むしろ楽しいとさえ思えるんです。

ワークショップはすごく曖昧な状況です。問う人も問われる人も答えを持っていませんし、先がどうなるのか見えません。曖昧さ耐性の低い人は、ワークショップにすごくストレスを感じるでしょうね。でも、そういう人でも、ワークショップの3回目ぐらいから「なんだかわからないけど、いいね」みたいなことを言い出すことがあります。

曖昧な空気をワークショップの参加者全員で共有することは、新しい学習や創発を起こしていくうえで絶対に必要なんです。曖昧でドロッとした空気になったら、それはチャンスだということを、あらかじめきちっと伝えておくといいと思います。

前田:チーム内でコミュニケーションがとれている場合の「曖昧」はいいと思いますけど、プロジェクトによっては社長ひとりが考えていて、コミュニケーションがほとんど取れていない場合もあります。そういう場合、曖昧な状況は火種になりかねません。でも、そういう時に、ワークショップを使って勝利条件を更新することは、有効だという感じがすごくします。

先ほど、プロジェクトの場合は勝利条件を決めて逆算していくということをおっしゃいました。私はそこの部分がこれまでずっと自分の中で腑に落ちていなくて…。プロジェクトは辻褄を合わせることを重視しますが、安斎先生がおっしゃったように、逆算でロジカルに見えても、時間軸で勝利条件は変わりうるわけですよね。つまり、それによってプランは変わると言えますよね。

安斎:そう思います。全然計画的な逆算ではないですからね。局面ごとに相当アップグレードされていくわけですから。仮説的に計画を作ってみて、やりながらそれに修正を加えていくような感じです。決めすぎないでおいて、1回目にやったことをきちんと引き取って、2回目を設計したり修正したりする期間をちゃんと確保してやっていきます。

前田:そうです、そうです!先生の言葉で、私がもやもやしながらやってきたことが整理されてきました。1回目にやったことをきちんと引き取ること。それを次に活かすこと。このサイクルが重要ですね。


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