「マッドメン」大好き! 昔は偉大な広告が生まれたのに今は・・・
2つ目の「黄金時代」型というのは、2007年から2015年に人気を博した1960年代の広告全盛期のニューヨークのマジソンアベニューのエージェンシーを舞台にした米のドラマ『Mad Men』が象徴的で、最初の啓蒙型とは真逆になります。どんな産業でも勃興期には偉大な才能が見出され、ビジネスを飛躍的に拡大する段階がありますが、それは巨大な消費市場が生まれた米国の60年代で、そのころに活躍した広告業界の巨人たちが生み出した「20世紀のもっとも偉大な広告」という風に語られるわけです。
そして黄金時代である過去と比較すると、なんと今の広告はその立場が小さいかを嘆くことになります。広告主とエージェンシーの関係は、クリエイティブに対する信頼が基礎ではなくて、調査結果をもとにいかに安全でリスクのないアイデアを採用するかになっていますし、テレビを中心としたマスメディアがいまやデジタルを中心とする複雑な環境のもと、どんな広告をやるべきかが広告関係者のなかでも不透明でプランが決まりにくいだけでなく、投資として大きなキャンペーンを実施するよりも、小さい予算で様々なことを少しずつ試していくようなやり方・・・。
これでは21世紀に偉大な広告など生まれない!というような語り口になってしまいます。皆さんも少なからずそんな愚痴を先輩から聞いたことがあるかもしれません。
しかしながら1つ目の啓蒙型と比べても、このような過去の礼賛はあまり生産的ではありません。フェルドウィック氏もこのような黄金時代型は、特に60年代のビル・バーンバック氏に代表される「クリエイティブ革命」と合わせて伝えられることが多く、その当時のクリエイティブ革命そのものを「啓蒙型」として捉えられていると言っています。つまり、バーンバック以前はオワコン、というわけです。
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