コラム

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新型コロナウイルスの影響下で、消費者の行動はどう変化するのか?

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4月を機にコロナウイルスによる「変化」に注目が集まる

新型コロナウイルスの感染拡大が与える社会への影響は、日本における年度の移り変わり目である4月になって、より深刻度が高まりました。多くの上場企業が2020年度の第一四半期の決算報告を迎え、1月から3月にかけて新型コロナウイルス危機によって悪化していった状況が明らかになりました。

4月に入って、政府は7都道府県に緊急事態宣言を発令。その後、それを全国に拡大しました。日本特有の需要期シーズンである春先から5月初旬までのゴールデンウイークのビジネスの機会は、これによってことごとく消失し、むしろ連休が自宅自粛週間に変わりました。

数カ月前にあったような「この影響は短期間で過ぎるだろう」との楽観的な見通しを持つ人は少なくなり、4月は3月の時点で新型コロナウイルスによる明らかな今後に向けての変化を捉えようという動きも活発になっています。

「ニューノーマル(新しい規範)」といった言葉も、マッキンゼーのようなコンサルティング会社がレポートとして提言するだけでなく、マーケティングの大家であるフィリップ・コトラー教授からも語られるようになりました。つまり、この新型コロナウイルスによって起きる本質的な変化をどうとらえるかがまさに今の課題となりつつあるのです。

私は、これまで経営者目線のコンサルティング会社の報告書だけでなく、さまざまな機関が独自に発表してきたレポートを見て、「新型コロナウイルスが与える影響」について、様々なレベルでレポートが出てくることに、ひとつの変化を感じました。そうしたなかでも、私と同じようなマーケターに関連が深いものをいくつか取り上げて今後、私たちが考えなければならない変化について考えてみたいと思います。

メディアの接触は増加傾向だが広告出稿は減少

まずは私たちマーケターが、最も気になるメディア接触の行動の変化です。当然ながら外出や会食を控えるなどの行動は、在宅時間が増えることを意味しますので、常識的にもテレビやインターネットの接触時間が増えることは誰でも予想できるでしょう。

■各種調査レポートから見えたメディア接触行動の変化

上の図は筆者の推測も含めてまとめたものですがニールセンによれば世界的にもメディア消費が最大60%増加するとの予測もあり、新型コロナウイルスの影響下において、家にいることがメディア接触の時間を押し上げているのは明白です。

もちろん、デジタルメディアが躍進するのはこれまでの傾向からして不思議ではありません。しかしながら、テレビがやはり在宅における最も中心のメディアであることが再認識された結果になっています。特に若年層のテレビ視聴が増加していることで、テレビが起点となってデジタルのサービスを知ることも増えてきそうです。

また、このような社会的な危機的状況において、正しく信頼できる情報という価値においては、新聞も含めて情報の信頼性を意識しているところも特徴的です。ただ情報量が多いだけでなく、質的な意味合いも重要になってきます。このあたり、インターネットメディアはまだまだ玉石混交なため、広告主が広告を出稿する際もメディア接触だけでは語りにくいところがあるでしょう。特にソーシャルメディアについてはメッセージの仕方も含めて、注意が必要です。

このように消費者のメディア接触は増えているものの、経済的なインパクトは大きく、私が話を聞いた広告会社では、メディアへの広告出稿量自体は3月から減少しているようです。インターネットのメディアは増えているものもありますが、Amazonでさえ全体の業績が下がっているためにGoogleへの広告出稿を取りやめしていることもあり、一概にデジタルメディアが良いとも言えません。

このような消費者のメディア接触行動の変化を見極めるに際しては、そのマーケターがどのような業界に属しており、今はその企業にとってどのようなビジネスステージにいるかを考えたうえで行動することが求められるでしょう。業界によってはこの時期には積極的に広告を出稿することも判断のひとつですが、それがすべてのプレーヤーにとって正しいとは限りません。

ここから想像する消費者のインサイトは主に2つあります。

1.メディアにおける情報の信頼度が低下する
新型コロナウイルスの危機という異常な事態だからこそ、メディアの報道に注目しているのはわかりますが、良くも悪くも「情報」に大量にさらされることで、情報に対する信頼度が著しく低下していることです。

デマが簡単に広まりやすいのは、情報の信頼度が疑わしいからで、半分信じていなくても損をするのが嫌なので、リスクを避けるために早めに行動することにつながります。買いだめが引き起こす店頭の品切れという現象は、個人レベルではほとんど意識していなくても起こります。それは、ある数の人々が行動することでそれが大きなインパクトにつながるからです。

この信頼度は広告主からすると、メディアにおけるブランドセーフティに気を付けるべきということになります。特にネガティブな報道が増えることも予想されますので、どのようなコンテンツやメディアに、どの広告メッセージを出すかは考えるべきです。

2.メディアからの情報はストレスでもあり、欲求のはけ口でもある
もうひとつは、ストレスを減らすためには情報をシャットダウンすればよいのですが、いそれができないということです。つまり、「情報」とは現在のストレスを発散するための欲求にもなっているからです。

人と会ったり、街に出かけたりできないことは、新しい情報に接することを困難にしています。つまり、人々はいま、何かしら欲求のはけ口としての「情報」を欲しているのです。特にパーソナルなメディアであるインターネットの情報が増えるのは、娯楽のはけ口として機能しているからで、そしてその情報の負荷がストレスにもなっているというジレンマがあります。

今回のような外出制限によって、若年層においてテレビやインターネットで音楽が映画などのコンテンツの視聴が増えたことは、メディアの価値が高まったというよりも、コンテンツの再評価につながるということでもあります。しかしながらこのような状況だと、新しいものを見つけようというよりは、過去自分が見たことがあるもの、好きだったものを繰り返し見る傾向にあります。それはストレス発散が外向きに解決できないので、どうしても内向きになりやすいからです。

このようなメンタルストレスを発散するためという意味で、在宅でできる運動や、料理、趣味などのハウツーモノの情報が好まれています。このような活動は、今後も様々な形で増えていくかもしれません。

次ページ 「消費だけでなく今後のニューノーマルとしてライフスタイルがどう変化するのか」へ続く

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