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コピー愛。―『なんだ、けっきょく最後は言葉じゃないか。』によせて(藤本宗将)

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『宣伝会議のこの本、どんな本?』では、弊社が刊行した書籍の、内容と性格を感じていただけるよう、「はじめに」と本のテーマを掘り下げるような解説を掲載していきます。言うなれば、本の中身の見通しと、その本の位置づけをわかりやすくするための試みです。今回は、電通 コピーライター/クリエーティブディレクターの藤本宗将さんが『なんだ、けっきょく最後は言葉じゃないか。』を紹介します。

伊藤公一著『なんだ、けっきょく最後は言葉じゃないか。
2月16日発売 定価1760円

伊藤公一さんがコピーの本を出す。そう聞いていちばん楽しみにしていたのは、おそらく僕だろう。かつて直属の部下として一緒に仕事をさせてもらった僕だが、知っているのはクリエーティブディレクターとしての公一さんだけ。コピーを教わる機会は、実はそんなになかった。電通の中堅コピーライター向けに行われていた「コピーゼミ」にも参加したことがない。なぜなら、僕はその頃とうに中堅を通り過ぎてしまっていたから。

クリエーティブディレクター伊藤公一の実績はいまさら僕が説明する必要もないだろうが、部下の視点でその魅力を語るなら、本来の実力以上のパフォーマンスを引き出してくれるところ。いい歳になってもパッとしなかった自分を拾ってくれて、コピーライターとしてなんとかやっていけるようにしてくれたのは公一さんなのだ。

公一さんのディレクションは明快だ。いいコピーはいいと言い、ダメなコピーはダメという。それだけ。細かなことは言わずコピーライターを自由にさせてくれて、そのうえでしっかりとした指針を示してくれる。そのブレない尺度の秘訣がどこにあるのか?そういう興味をもって読み進めた。

だが読みはじめてすぐにその期待は裏切られた。これは魔法みたいな秘訣が書いてある本ではない。これはもっと本質的な、言葉との向き合い方を学べる本。コピーライターに限らず、言葉によってなにかを伝えようと志す人ならまず読むべきだと思った。これを読んでからスタートするのと読まずにスタートするのでは、ゆくゆく大きな差が出てくると思う(僕も若いときに読んでいたら今頃もうちょっとパッとしてたかも)。

コピーの解説も、読んでいて楽しい。名作コピーたちへのリスペクトと愛にあふれている。そういえば公一さんは、打ち合わせでいいコピーを見つけたとき本当にうれしそうな顔をするのを思い出した。この本を読んだ人たちによって世の中にたくさんの素敵な言葉が生まれたら、またいい顔で笑うんだろうなあ。

藤本宗将(ふじもと・むねゆき)

dentsu zero コピーライター/クリエーティブディレクター。1997年、電通入社。コピーライターとして多くの企業のメッセージ開発に携わる。主な仕事は、ベルリッツ「ちゃんとした英語を。仕事ですから。」、本田技研工業「負けるもんか。」、からだすこやか茶W「おいしいものは、脂肪と糖でできている。」、トヨタ「トヨタイムズ」など。TCC最高新人賞・TCC賞・ADCグランプリ・ACCグランプリ・毎日広告デザイン賞最高賞など受賞。