訪日への期待を繋ぎとめ、膨らませる。日豪によるテレビ番組のリモート制作
コロナ禍によって最も影響を受けた産業のひとつである旅行業界。
ここオーストラリアでも近年の訪日旅行人気は高く、コロナ発生前は毎年10%以上の旅行者の増加が続き、2014年に約30万人だった豪州訪日旅行者は、2019年にはその2倍の約62万人となり、日本はアジアで最も訪れたい旅行先として支持されていました。
訪日インバウンドプロモーションは当社doqの事業としても大きかったものの、2020年はその多くがキャンセルとなりました。今回は、そのような中でも実現させてきたプロジェクト、今のような時期であるからこそスタートした取り組みを通じて、Withコロナ、Afterコロナの時代において、海外に対してどのように日本を盛り上げていくことができるか、事例とともに解説していきます。
日系企業・自治体の方からはコロナ発生当初、このような状況下で積極的な発信を行うことは、かえってオーストラリアの生活者にマイナスの影響を与えてしまうのではないか、といった相談もいただきました。しかし1年が経ち、自由に移動ができていたこと、旅行ができていたことのありがたさ、つまりは「旅行が私たちの生活に与えていた豊かさ」に気づいた人が多いのではないでしょうか。いま、生活者にとっての旅行体験は、コロナ前以上に価値のあるものになっていると感じます。
また現在、オーストラリアで行われている観光プロモーションは国内旅行プロモーションが中心であり、トラベルバブルが一部解禁されているニュージーランドを除き、海外競合観光地のプロモーションを見かける機会はほぼありません。
「今すぐに日本に来てください」といった訴求はするべきでありませんが、適切な方法で訪日への期待を繋ぎ、膨らませるメッセージを届けることができれば、競合地のプロモーションがない中で日本への注目を一層高め、コロナ前にオーストラリア人の海外旅行客数で9位だった日本を、コロナ後にはそれ以上に押し上げるチャンスになるともいえます。
このような考えのもと、doqでは大分朝日放送と、いまの大分県の魅力を伝えるテレビ番組「Going Solo in Japan – The Wonders of Kyushu」を制作し、2021年1月にオーストラリア国内の地上波放送局で放映しました。
日本への渡航ができない中での番組制作にあたっては、日本での撮影経験のあるオーストラリア在住のディレクター・プロデューサーを起用しながら、日本国内での撮影は英語でのコミュニケーションが可能なヘッドカメラマンと、大分の撮影クルーで対応。
日本在住のオーストラリア人YouTuberが出演者となり大分県を旅することで、オーストラリア人訪日客の約60%を占めるミレニアル世代が自身を投影して、海外渡航再開後の訪日旅行をイメージできる番組を演出しました。
大分朝日放送からの現地の最新コンテンツ案をオーストラリアのディレクター・プロデューサーの目線でピックアップし、事前にオンラインで密な打ち合わせをし、撮影期間中も、リモートでオーストラリアから撮影内容のチェックとディレクションをすることで、ディレクター・プロデューサーは日本に渡航することなく、番組を成立させることができました。
日豪のチームによるリモート体制でテレビ番組を成立させることができたことは、私たちにとっても大きな自信となりましたし、またコロナ以降もこうしたプロジェクトの進め方がひとつのスタンダードにもなりえることを示唆したものでした。
コロナによる恩恵のひとつとして日本でもDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速があげられていますが、オンラインベースでのプロジェクト進行が世界中でひとつのスタンダートとなり、人々がそこに懸念を持たなくなったことは、今後は日本が国内のつながりだけでなく、距離の隔たりなく世界中の人々とプロジェクトを進めるチャンスが広がったともいえるのではないでしょうか。
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