コラム

“裏取りのプロ”テレビリサーチャーが語る『ファクト・フルネス』と『コンプライアンス』

ヒトには「思い込み」がある! バイアスをいかに取り除いてミスリードを防ぐか

share

裏取りで判明した2つの「ファクト」

クイズやナレーションなどをチェックするときだけでなく、情報を収集するときにも、国語辞典と百科事典はよく引きます。予備の知識があったとしても、改めて定義や概況をおさらいすることは、情報を精査する際、とても役に立ちます。今はインターネットで「日本国語大辞典」や「ブリタニカ国際大百科事典」「日本大百科全書」、デジタル版の「日本人名大辞典」など、さまざまな辞書・事典を引くことができますから、活用されることをおススメします。

とはいえ、当然ながら、辞書・事典で確認できる範囲は限られます。たとえば、以下のクイズの場合、

問題文:ヤンキースが、野球界ではじめてユニフォームにした工夫は?
正 解:背番号

野球界ではじめて背番号を採用したチームはヤンキースで間違いないか——百科事典では埒が明きません。どうするか?——私は確認に役立ちそうな資料を探しました。このときは、国会図書館で『日米比較 プロ野球 背番号を楽しむ小事典』(出野哲也著、彩流社、2010年)を見つけました(なお、必要な情報を手に入れる資料の探し方は、次回お話ししますね)。

見つけた資料で、ホーム/ロード(アウェー)の区別なく、年間を通じて背番号をつけた最初のチームがニューヨーク・ヤンキースであることを確認しました。また、次の事実を知りました——同年、クリーヴランド・インディアンスという球団もホームに限って背番号を採用していて、メジャーリーグ史上初めて背番号をつけて試合をしたのは、ヤンキースではなく、インディアンスだったのです。

クイズの問題文・正解に不都合はありません。ですが、番組で「ヤンキースが野球界ではじめてユニフォームに施した工夫は背番号である」と紹介することによって、「メジャーリーグ史上初めて背番号をつけて試合をしたのはヤンキースだ」というミスリードが生じないよう、解説が補足されることになりました。

「野球界ではじめて背番号を採用したチームはヤンキースで間違いないか」。「間違いではない、が……」。ファクトを追求する上で、この「……」の箇所こそ要注意だ。©123RF

次ページ 「人は「思い込み・バイアス」からは逃れられない」へ続く

Follow Us