コラム

燃えない、スベらない。パーパス・ブランディングの極意とは

意味のあるブランドパーパスは、どう発見するのか?~2つのインサイトがその鍵を握る~

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「半径3メートルで起こっていることは、日本中で起こっている。」

「半径3メートルで起こっていることは、日本中で起こっている。日本中で起こっていることは、世界中でも起こっている。」とは、宮崎駿さんの言葉。

宮崎さんは昔からとにかくジブリ社内をブラブラ歩きまわり、誰かをつかまえてはよくお喋りしているそうです。それは家族の話だったり、今ハマってるものの話だったり、社員のデスクに置いてあるものを見て「何これ」から始まる話だったり。そんなたわいもない会話から、ちょっとした世の中の変化や空気を感じ取り、それを作品に反映すると、実は同時代に生きる多くの人の共感を得るものになっていた。そういうことを繰り返してきたそうです。つまり、時代や世の中に共通した普遍的な真実を、身近なひとりを見つめることで発見してきた、というわけです。

誰しも時代の必然からは逃れることはできないし、逆に、一人ひとりの個人が、世の中や時代の空気をつくっているとも言えます。たとえば、「ズーム会議の画面に映った自分の顔が、なんだか老けて見えてやだなあ」だったり、「こんなにテクノロジーが進化しているのに、なんで毎日、こんなに忙しいんだろう」だったり。そんな、ふと抱く個人的な感覚や感情も、今この時代に生きているからこそ抱くものだったりするわけですよね。そんなふうに「時代」や「世の中」の影響によって、ひとりの消費者の不満や願望がつくられている場合もあれば、反対に、ひとりの消費者への洞察から、「今の時代とは」「今の世の中とは」というソーシャルインサイトが見えてくる場合もあると思います。

そこに、ブランドはどんな役割を果たせるのか?あるいはブランドが役割を果たせそうな消費者インサイトやソーシャルインサイトはあるか?ソーシャルインサイト、消費者インサイト、そしてブランド。この3つが重なる場所をしっかりと見つけられたら、なんだかフワッとしてるだけの「パーパス風味なもの」や、それ自体が目的化してしまったような意味のないパーパスではない、そのブランドだけの意味あるブランドパーパスが立ち現れてくるはずです。

また、冒頭でも触れましたが、これはパーパスだけでなく、具体的なアイデアを考える場合でも同じように使えます。

第1回で紹介したマスターカードの「True Name」。これはトランスジェンダーであるチームメンバーのパーソナルの話から始まったと書きました。見た目の性とは異なる「男性的な」あるいは「女性的な」名前の書かれたクレジットカードを出した時に、偏見に満ちた視線を感じたり、時には身の危険を感じたり、という個人的な体験。そこから「クレジットカードでの支払いが、LGBTQ+に対する偏見やヘイトクライムにさえつながることがある」というより社会的なインサイト。同じく、オーストラリア造幣局の「Donation Coin」。「キャッシュレス化の進行に合わせて、募金額が減っている」という世の中に対する洞察からえたインサイト。そして「人は強い動機があるから募金するのではなく、たまたま小銭を持っているから募金するのだ」という人間そのものへの洞察から得たインサイト(こちらのインサイトはあくまで僕の推測ですが。)

ソーシャルインサイト、消費者インサイト、そしてブランド。その3つがピタリと重なる場所を見つけることができれば、ブランドの本質に迫る骨太なアイデアが、もう同時にそこに見えているはずです。

「その重なり合う場所。それを探すのが難しいんだよね。」・・・そうなんですよね。と言うわけで、次回はそのためのちょっとした視点やコツのようなものについて書ければと思います。それでは。

*ニューヨーク・タイムズは他の米国紙に先駆けてDXを推し進めた結果、2020年末時点で、電子版と紙媒体を含む有料読者数が750万人を記録。特に電子版を含むデジタル関連は230万人の純増と、過去最大の伸びとなった(2021年2月6日配信のダイヤモンド・チェーンストアオンライン『米NYタイムズ、昨年のデジタル読者は過去最大の増加』より)。

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