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人的資本の情報開示、広報に求められることは

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2022年8月、人的資本経営コンソーシアムが設立された。また、経済産業省ではサステナビリティ課題を経営戦略に取り込むことで中長期的な企業価値向上を促す「SX」といった変革も推進。情報発信・コミュニケーション領域を担当する広報担当者ができることとは。

※本稿は『広報会議』2023年6月号の「サステナビリティこれからの伝え方」特集より抜粋しています。

経済産業省
経済産業政策局 産業人材課
西村萌氏

経済産業政策局 産業資金
山井翔平氏

従来、コストだと考えられていた人材を「資本」として捉え直し、中長期的な企業価値向上につなげる「人的資本経営」。2022年8月、一橋大学 CFO教育研究センター長の伊藤邦雄氏をはじめとする計7人が発起人となり、人的資本経営コンソーシアムが設立された。

人的資本経営を推進するにあたって課題となっているのは『経営戦略と連動した人材戦略をどう考えていくのか』(実践のフェーズ)と、『その戦略をどのように発信してアピールにつなげていくか』(開示のフェーズ)の2軸。

「『人材版伊藤レポート2.0』では、実践ガイドと先進事例と共に、人材戦略に求められる3つの視点と5つの共通要素をアイデアの引き出しとして発表。また、人的資本の情報開示についても環境整備が進んでいます。こうした流れの中、『経営戦略と連動した人材戦略の実践』と『人的資本の情報開示』を両輪で進めていくという観点から設立されたのが『人的資本経営コンソーシアム』です。人的資本経営へ取り組む企業同士で情報や課題を共有することで、互いに切磋琢磨していただくような場になることを期待しています」と経済産業省 経済産業政策局 産業人材課の西村萌氏は語る。

『人材版伊藤レポート2.0』を参考に、そこで紹介されている3つの視点と5つの共通要素を簡素化したもの。この視点と要素はサステナビリティ発信における切り口としても活用できそうだ。

実践・開示の背景を明確に

コンソーシアムでは「人的資本経営をどのように経営課題化するか」や、その上で「リスキリングをどう実践していくか」「職務・業務に対して、適切な人材の再配置をどう行っていくか」といったことが議論になっているという。

「コンソーシアムでは投資家も交えた議論や対話を行っています。 人的資本情報の開示については、経営戦略の土台になる人材戦略、人的投資という観点から、KPIや事例を示していくことが重要です」(西村氏)。

実際の対話の場では「なぜこの人材投資が行われているのか」と投資家が掘り下げて「当社では今後このような事業展開を計画していて……」と企業側がその背景を説明することもあるそう。投資家と企業の双方が歩み寄りながらより良い実践・開示に向けて話し合いを進めているという。

「これまでは企業に関する情報開示は投資家に向けて行われることが主流でしたが、特に人的資本においては投資対象となる『従業員』や『(将来の従業員としての)学生などの求職者』も重要です。既に、人的資本に関する情報を『入社したらどのように成長していけるのか』といった切り口から、積極的に採用サイトなどで発信する動きも出ています。こうした取り組みにより、必要な人材の確保が進むことで、企業の価値向上に向けた好循環が生まれるのではないかと期待しています」。

また、人材版伊藤レポート2.0では退職者(アルムナイ)とのつながりについても言及。退職した従業員との健全なネットワークを持つことで、再就職の可能性が高まることはもちろん、自社を理解した良きアドバイザーとして機能してくれることも考えられる。人的投資した人材が離職するリスクといった課題への解決策のひとつと言えるだろう。

「雇用関係にない人的ネットワーク」を外部の情報収集などの社外広報に役立てられるよう、アルムナイ・ネットワークの必要性を社内に理解してもらうといった準備を行っていくことも広報担当者の役割と言えそうだ。

この記事の続きは『広報会議』年6月号に掲載しています。
 

広報会議2023年6月号

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【特集】
企業のサステナビリティ
これからの伝え方

GUIDE
一貫性ある開示が企業価値高める
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OPINION1
長期視点で評価される企業のESG情報とは
伊井哲朗(コモンズ投信 代表取締役社長 兼 最高運用責任者)
 
COLUMN
ポイントをしぼったサステナビリティ発信
関 美和(MPower parters ゼネラル・パートナー)
 
共感の輪を広げる「人的資本」の戦略的な伝え方
双日/KDDI/SOMPOホールディングス
 
OPINION2
人的資本の情報開示、広報の役割とは
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OPINION3
メディアから見た
「ESG」発信の蓄積が上手い企業とは
会社四季報オンライン
 
【第2部】
ESG発信ケーススタディ
 
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世界初のCO2排出量実質ゼロフライトでメディア露出
日本航空(JAL)
 
CASE2
社会での自社の存在意義打ち出しパブリシティ獲得
アセンド
 
CASE3
未来を創造するための統合報告書
アバントグループ
 
CASE4
サイトでビジョンから商品を一気に紹介
オムロン
 
CASE5
ステークホルダーを巻き込み「本気感」伝える
不二製油グループ
 
CASE6
方針の明文化で従業員の当事者意識を醸成
ポーラ
 
CASE7
明確な目的掲げたインプットと議論の場づくり
TBM
 
CASE8
エアコン業界全体の脱炭素と発展に向けて
ダイキン工業
 
【第3部】
納得感を高めるサステナビリティ発信 実践編
 
OPINION1
ストーリー性のある開示・改善のサイクル
野村総合研究所
 
OPINION2
学生から見た「統合報告書」
一橋大学
 
COLUMN1
評価される「統合報告書」のポイントとは
イチロクザン二
 
COLUMN2
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揚羽

ほか