世界的に拡大するスマートフォン市場で、日本メーカーは後塵を拝することになってしまいました。スマートフォンに限らず、日本のものづくりがジャラパゴスと揶揄されることを非常に残念に思っています。
そして今の日本のメーカーがこの現状を打破するには、抜本的な組織改革と意識改革が必要だとも感じます。ジャラパゴスと言われる商品が生まれる背景には、不要なモノ・コトを不要と言えない「社内民主主義」や、過剰なまでのお客様視点、デザイン軽視等の姿勢が見えます。強いブランドや商品を創るには、これらの比重は逆転していることが望ましいでしょう。
社内民主主義は、様々な製品アイデアや技術を全部入れしてしまったボタンだらけの商品を生みます。過剰なまでのお客様視点は、ブランドポリシーとしてのあるべき商品像を、大衆迎合的な判断により結果的に魅力のない商品へと変えてしまいます。デザイン軽視の商品開発は、デザイナーの関わりを商品開発プロセスの後半におくことになります。
そして日本の商品は、過剰な高機能のために価格が上がり、使うことのないボタンで溢れ、それでも価格を抑えるために安い素材で覆い、デザインはつじつまを合わせるために存在する。この結果、新しい技術を好む一部の日本人には売れても、シンプルで普遍的な機能と高いデザイン性を持ち、価格を抑えた商品を開発する海外のメーカーには負けてしまいます。
今や世界最強の電子メーカーとなったアップルは、「デザインが製品の出発点」という哲学を持ち、デザイナーの社内地位が高い。アップルのデザインチームは、ジョナサン・アイブを筆頭にCEO直属におかれています。製品開発はデザイン主導で行われ、技術チームやサプライチームはデザインを実現するために存在します。このデザインチームが、たった一つのボタンしか付いていない携帯のデザインから、箱をあけた時の商品との出会いの瞬間までデザインしています。
僕は、メーカーのデザインチームは、アップルの様に経営直属の独立した組織として社内ヒエラルキーの上位におくべきだと思っています。デザイナーには製品のデザインだけではなく、ブランドのあり方、ユーザーエクスペリエンス、時には店舗での購買体験までもデザインの対象にするべきでしょう。日本のメーカーに足りていないのは技術ではなく、デザインです。そしてデザイナーも越境を志した意識改革をしていかなければなりません。日本のものづくりを、これ以上ジャラパゴスと呼ばせないために。
「「経営のとなりにあるデザイン」〜デザイナーに何をさせるべきか〜」バックナンバー
- デザインをクライアントの経営資源にしていく。(2014/2/06)
- 「表参道布団店。」という、イノベーションの実験場。(2014/1/23)
- 体験デザインにイノベーションの未来を探る(2014/1/09)
- 「一番搾りフローズン<生>」制作秘話――(3)「空間デザイン」編(2013/12/19)
- 「一番搾りフローズン<生>」制作秘話――(2)「体験開発」編(2013/12/05)
- 「一番搾りフローズン<生>」制作秘話――(1)「ブランディング」編(2013/11/21)
- 「青山フラワーマーケット」に見る、購買体験から考える新業態の始め方。(2013/11/07)
- スタバがデザインした「コト」―体験デザインがブランドをつくる。(2013/10/24)
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