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コラム

CSR視点で広報を考える

マルハニチロHD子会社冷凍食品農薬混入事件の正しい読み方(1)

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食品会社にとって初動の危機管理の遅れは致命傷

水産大手マルハニチロホールディングスの子会社「アクリフーズ」の群馬工場(群馬県大泉町)で製造された冷凍食品から農薬「マラチオン」が検出された問題は、年末年始を挟んで事態が急展開している。

当初は、アクリフーズの原因究明能力に対する懸念や情報開示の遅れなどを理由としたバッシングに近い報道が繰り返されていたが、工場内で同種の農薬の使用がないことや商品内の農薬の検出濃度が高いことを受けて、何者かが意図的に農薬を混入させた可能性を含めて警察当局も広範囲な捜査に乗り出している。

群馬県は、昨年末の30日に館林保健福祉事務所の職員を派遣し立入検査を行ったほか、県警も今年に入り、4日、5日と工場で実況見分を実施、各製造ラインの責任者から作業手順や流通の流れについて説明を受けるなどしていた。

1月7日時点で、アクリフーズ群馬工場で製造された冷凍食品をめぐり、下痢や嘔吐、腹痛などの症状を訴えた相談者は全国34都道府県で420人以上に上り、特に7日に限っては新たに約120人が被害を訴える結果となっている。

それ以上に、今回の事件が普通の異物混入事件と大きく異なる点は、異物である農薬の混入経路が未だ不明である点、自主回収の対象となる商品群が全国90品目以上640万パックに及ぶ大規模なものとなった点である。異臭から始まった事件は、塗料混入の懸念や原材料農薬の残存の可能性などを否定して、第三者による悪意の異物混入の蓋然性に帰着しつつある。

異物混入事件の対処は偶然の汚染か悪意の混入で全く違う

アメリカ連邦捜査局(FBI)では、偶然の汚染(Accidental Contamination)と悪意の混入(Malicious Product’s Tampering)とでは捜査の考え方がまるで違ってくる。悪意の混入については通常、脅迫・恐喝行動が付随してあり、これらの行動には概ね以下の動機等により発生することが多い。

  1. 社会的、政治的な抗議行動
  2. 従業員、元従業員、顧客、ライバル会社等による報復・仕返し
  3. 国、会社、製品に対する経済的な抗議行動
  4. 愉快犯を含めた隠蔽行為
  5. 自殺、殺人の隠蔽行為
  6. 言いがかり要求を含めた金銭要求を目的とした犯罪行為

また、ターゲットとなるのは、食品、飲料品、医薬品、公共水道システムなどであり、その中でも食品が標的となる可能性は極めて高い。さらに、食品汚染は、工場などの生産過程では発生せず、製品販売現場で発生する(製品を現場から持ち帰り、汚染を加えた上で、元の位置に戻す)ことが一般的である。

≫次ページ 「犯人が脅迫を目的として行動に出た場合は」に続く

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