デジタルシフト相談室「総合系エージェンシーの皆さんのお悩みに答えます」編

【前回の記事】「デジタルシフト相談室「広告主の皆さんのお悩みに答えます」編」はこちら

小霜和也著「急いでデジタルクリエイティブの本当の話をします。」(7月1日発売/宣伝会議)
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新刊『急いでデジタルクリエイティブの本当の話をします。』の発売を記念して、著者の小霜和也氏が、現場でデジタルシフトに取り組む皆さんからの悩みに答えていく本連載。2回目は、総合系エージェンシーの皆さんからの質問にお答えいただきました。「エージェンシーのデジタルシフト」と「動画の制作・運用」の2つの話題でお届けしてまいります。

小霜さん、今日もよろしくお願いします。悩めるエージェンシーの皆さんからの質問が集まっております。では、早速お1人目にまいりましょう。

Q:Web広告を3年担当し、5年間の海外赴任を経て日本に戻ってきました。最新の潮流や考え方を取得し、業務に活かしたいとやる気に満ちて帰ってきたのですが、社内では、最新のマーケティング手法の習得が、個々の興味関心にゆだねられているのが現状です。クライアントへのプレゼンの前に、社内の理解というハードルが立ちはだかっていることに気づき、戸惑っています。

 

小霜:Webの運用はヒューマンエラーも多く、リスキーなところがあります。収益と天秤にかけるとヘタに手を出さない方がいい、という判断をする営業さんは少なくありません。それはそれで間違いではないと思います。が、いつまでもマスに閉じこもっているわけにもいかないでしょう。広告主はすごく勉強してますよ。僕の新著も広告主にウケてます。彼らがマス・Web統合したマーケティング組織を作った時、エージェンシーとしてついていけなければどうなるか、という想像をもっと働かせるべきです。すでに僕のところには広告主から「クリエイティブをインハウスにしたい」とか「エージェンシーを飛ばしてプロダクション直でやりたい」といった相談が来るようになってます。

しょっぱなから、なかなかシビアなご回答ですね。広告主はこういう本を読んでいるようですよ、と社内で本書をぜひご活用いただければと思います。

Q:Web広告のアドベリフィケーション問題とは何かがよくわからないのですが。

 

小霜:たとえば1000万回視聴されたということは皆が支持する質の高い動画だとコンピュータが判断して、あなたが作ったWebCMを松居一代動画にくっつけて配信したらクライアントはどんな顔をするだろうか、という問題です。

次ページ 「入社7年目の営業です」へ続く

Q:入社7年目の営業です。弊社にはメディアプランナーなどがおらず、営業がその大半を行っています。営業として与えられた予算で企画を立てる際、メディアプランニング、コミュニケーションプランニングが必要になるのですが、現状ままならない状態です。

 

小霜:デジタル系エージェンシーは営業さんが全てやる、が基本です。それはそれで問題あると思うんですが、総合系エージェンシーに関しては、縦割り制がマス・Web統合の弊害となっています。各クライアントに営業さんに加えて運用する人を張り付けるのは現実的ではないですからね。危機意識のある営業さんは運用の勉強を始めていますよ。後はその労力に見合うフィーを取れるかですよね。総合系エージェンシーが皆で「デジタルフィーちゃんともらおう運動」とか始めたらどうでしょうかねえ。

小霜さん、前回からちょいちょい時事ネタが入りますね(笑)。アドベリフィケーションやフェイクニュースの問題に関しては、新著第3章の「WebCMを配信する場所はどこか」で触れていますので、よろしければぜひご覧くださいね。

Q:Webプランニング面での外部連携先が乏しいのが弊社の課題です。
 

小霜:紹介しますよ?

Q:紙媒体が中心となっていたクライアントの考え方を、いかに効率的にデジタルへシフトするか提案方法が知りたいです。

 

小霜:おそらくクライアントはダイレクト系ですね?そして、新聞、チラシが効かなくなってきて頭を痛めていると。だとしたら、Webが効くかどうか低予算でA/Bテストしましょうという提案しかないような気がしますが。

具体的なご回答ありがとうございます。確かに、具体的に成果で示すのが、一番手っ取り早いかもしれません。次は、プランナーの方からのご相談です。

次ページ 「動画の活用方法も含めたプランニング、提案が」へ続く

Q:動画の活用方法も含めたプランニング、提案ができるようになりたいと考えているプランナーです。動画を制作する前と制作した後に、具体的にどんなことを考えればよいか、アドバイスいただけますか。

 

小霜:プランナーということですが、CMプランナーと想定してお話ししていいでしょうか。どんな強いコンテンツを作ってもターゲットに届かなければ存在しないも同然です。なので僕は最初にどう届けるかというアプローチ方法を、運用する人と議論します。そこからこういう内容のCMを何タイプ作るべき、ということにもなれば、逆にこういうCMを作ったらうまく運用できる?と相談したり、行ったり来たりの中で最良の落としどころを見つけます。WebCMを制作した後は運用する人の腕にまかせますが、そこから得られたデータを元に、次の展開があればスタディとして活かすようにします。そもそも動画にこだわる必要もないのです。僕がWebを活用するのは、全体のコミュニケーション投資をギリギリまで効率化しようと思うからです。そのために静止画バナーがよければそうするし、6秒バンパーで十分ならそうするし、やっぱり長尺動画だなと思えばそうするということで、そういった思考の延長線上で動画の内容をどうすれば何とどうつながって最終的な成果が見込めるか、と考えていくわけです。なのでまず運用する人との会話が欠かせないということです。

動画の企画は常に運用のプランニングと共に、ということですよね。逆に運用プランも含めて企画を出せるプランナーになれれば、希少性は高まるのではないでしょうか。

さて、後半は動画に関するお悩みをまとめてお届けいたします。

次ページ 「動画と言えば安くできるんでしょ」へ続く

Q:動画と言えば安くできるんでしょ、という広告主の思い込みを何とかしたいです。きちんと作れば、当然工数もかかるので安上がりにというわけには行きません。動画できちんと予算をいただけるいいアイデアはないでしょうか。

 

小霜:「これ読んでください!」て僕の本を渡すとか。

Q:動画の拡散見込みと売上げの相関を計算する(しつつ動画のプランニングをする)ことは、可能だと思いますか?

 

小霜:ご質問の意味がよくわからないのですが、まず、動画がどれだけ誰に拡散されるかを見込むのは不可能です。また僕はむしろ拡散されない動画の方が商品の売上げにつながるのではという仮説を持っています。拡散することで自己実現欲求が満たされてしまい、商品への飢餓感がなくなってしまうからです。ただ、Web広告で着実に売上げにつなげるための設計はある程度可能だと思っています。そのやり方は僕の新著の第3章に書いています。

次ページ 「WebCMだけだと」へ続く

Q:WebCMだけだと、タレントが出てくれないんですが。

 

小霜:タレントさんによってはテレビCMが広告起用の条件となることがあります。広告はそのタレントさんの広告にもなるので、どうせ出るなら多くの人に見られたい、という理由でしょう。大物、つまり「Public」性の高いタレントさんほどそうです。流通バイヤーさんとの取引通貨は未だテレビCMのGRPという話は新著の中でも触れましたが、まだまだ広告周辺の関係者はWeb広告を一段低く見ているのが実状です。ただ思うに、Webはテレビよりも「Private」性の高いメディアなので、タレントさんも特定の層から強い支持を得ているとか、そういう方がフィットする気がします。最近は映画やドラマも主役より脇役のキャラでストーリーの個性を出すものが増えていますが、僕がWebCMに起用する時はそのあたりの人をよく狙い目にします。

VAIOのキャンペーンでは、第1期は半沢直樹などでクセのある上司役を多く演じていた手塚とおるさんを、第2期では某怪獣映画にも登場していた市川実日子さんを起用しています。このあたりの方が、小霜さん的には“狙い目”ということなんですね!

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小霜和也(小霜オフィス/no problem LLC. 代表)
小霜和也(小霜オフィス/no problem LLC. 代表)

Creative Director/ Copywriter/ Creative Consultant
1962年兵庫県西宮市生まれ。1986 年東京大学法学部卒業。
同年博報堂入社、コピーライター配属。1998 年退社。
2017年現在、株式会社小霜オフィス no problem LLC. 代表。7月に最新著書『急いでデジタルクリエイティブの本当の話をします。』(宣伝会議刊)を発売。他、著書に『ここらで広告コピーの本当の話をします。』(宣伝会議刊)

小霜和也(小霜オフィス/no problem LLC. 代表)

Creative Director/ Copywriter/ Creative Consultant
1962年兵庫県西宮市生まれ。1986 年東京大学法学部卒業。
同年博報堂入社、コピーライター配属。1998 年退社。
2017年現在、株式会社小霜オフィス no problem LLC. 代表。7月に最新著書『急いでデジタルクリエイティブの本当の話をします。』(宣伝会議刊)を発売。他、著書に『ここらで広告コピーの本当の話をします。』(宣伝会議刊)

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