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日本らしいマーケティングを考えてみよう(本間 充氏)

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大量販売や購入者数の拡大を目指すより、一人ひとりの顧客に深く長く寄り添い、デジタルで自動化できることは任せ、利益を伸ばしていくには? 本間充氏の初の単著『シングル&シンプル マーケティング』(宣伝会議 刊)では、生活環境にデジタルが浸透した時代の、マーケティングの基本戦略を解説しています。ここでは発刊を記念したコラムをお届けします。

前回の記事では、「インターネット」や「デジタル」が、デジタル・メディア以外の、例えば映画などにも影響を与えていること。また、生産や配送といった、マーケティングのモノやサービスの設計、製造にも影響を与えていることを説明しました。私が、今回『シングル&シンプル マーケティング』を書いた理由の一つに、このような状況を多くの方に共有頂きたい、ということがあります。そして、今回はなぜこの『シングル&シンプル マーケティング』というタイトルになったか、その背景について説明したいと思います。

シングル&シンプル マーケティングという考え

まず、最初にお断りしたいのは、このシングル&シンプル マーケティングという言葉は、私が作った言葉で、もともとマーケティングの言葉として存在したものではありません。

本の「はじめに」の部分に、私は、このように書きました。

シングル&シンプル マーケティング
大量生産、大量消費を目指すのではなく、対話+データ分析で個人に寄り添う、これからのマーケティングを、宣伝会議の人気講師が提唱。利益を伸ばしたいマーケター必読。8月31日より販売開始。

大量生産、大量販売、売上拡大を目指すのではなく、「デジタル」を活用して、「シングル」=個人ベースでお客様のニーズをくみ取り、相応しいサービスを提供していきます。大量生産時代以前のように、マーケターがお客様に長く寄り添い信頼を築いていく、人と人の関係へと「シンプル」に立ち戻り、デジタルで自動化できることは任せ、対話を重視し利益を伸ばしていくマーケティングです。

つまり、このシングル&シンプル マーケティングは、きわめて「人」に焦点をあてたマーケティングです。その「人」に焦点をあてるために、「インターネット」や「デジタル」をマーケティングのプロセスの中で使うことを考えてみたかったのです。

私は長い間、「デジタリアン」として、デジタル技術を活用したマーケティングを実践してきました。インターネット空間を使った生活者とのコミュニケーションは、コンピューター同士の通信なので、どのコンピューターにどの情報を送るのか、送ったのかがわかります。マス・マーケティングから、ある特定の属性のグループの人たちへのマーケティングに変わりつつある中で、特定の人たちにターゲティングができるインターネットを使ったアド・テクノロジーは、素晴らしい武器でした。しかし私は途中で、この技術の魅力に惹かれ過ぎてしまったのかもしれません。もともと「人」に焦点をあてたマーケティングの武器としてアド・テクノロジーを使っていたのですが、いつしかアド・テクノロジーの収集・専門家になってしまったのかもしれないのです。

私は、その反省も含め、マーケティングを再度、俯瞰的に考え、デジタル時代の今こそ、「人」に寄り添う、それも長く寄り添うマーケティングを考えてみようと思ったのです。

次ページ 「マーケターは、マーケティングを考えることも仕事」へ続く