【関連記事】「クリエイターが考える、withコロナ時代の交通・OOH — Vol.1「Metro Ad Creative Award 2020」審査員リレーコラム」はこちら
「クリエイターが考える、withコロナ時代の交通・OOH — Vol.2 渡辺潤平氏」はこちら
4回目を迎えた2020年のコラムテーマは「withコロナ時代にクリエイターが考える 交通・OOHに贈る期待」。外出が制限され、人々の行動が大きく変化している今、どのようなコミュニケーションが求められているのでしょうか。
本リレーコラムには、「Metro Ad Creative Award」の審査員らが登場。交通・OOH広告を広く、街の魅力を創造するメディアとして捉え、最前線で活躍するクリエイターたちが自身を刺激する都市におけるクリエイティブについて語ります。
第3回は審査員の木村健太郎氏が担当します。
制限がある時期だからこそ、アウトドア/交通広告にアイデアのチャンスが広がる
アウトドア広告/交通広告という領域において、コロナ禍は巨大なインパクトをもたらしています。人々の外出や移動は世界中で制限され、人が密になる状況は避けなければいけなくなってしまったからです。
外出や移動だけでなく、コロナ禍は、人々から多くのものを奪ってしまいました。しかし、人間というのは全てが満ち足りている時より、何かが足りない時の方が、頭が働いたり、新しい発想ができたりするものです。逆にすべてが充足していると、人は楽をしようとして、今までのやり方を変えようとはしなくなってしまう生き物なのです。
この、“あって当たり前だったものがなくなってしまった”ことを逆手に取った、新しいアイデアのアウトドア広告/交通広告を二つ紹介したいと思います。
一つ目は、アメリカのバーガーキングの屋外看板広告です。とはいっても、これは屋外で掲載されたものでなく、オンライン会議の背景をジャックした屋外広告です。どうやってジャックしたのか。オンライン会議の背景をバーガーキングの看板の写真にすると、ワッパーが一つもらえるというキャンペーンをしたのです。みんながあまり外出しないことを逆手に取ったうまいクリエイティブだと思いませんか?
もう一つは、ロンドンで実施されたDurexというコンドームのアウトドア広告です。コロナ禍は、日常(NORMAL)を奪い取ってしまいました。もう今までの当たり前だった日常には戻れないかもしれない。そんな悲壮感やあきらめを逆手に取ったキャンペーンをご紹介します。LET’S NOT GO BACK TO NORMAL(日常に戻るな)というキャンペーンです。「1日あたり100万人がかかる必要のない性感染症になる、そんな日常には戻るな」「女性がコンドームを持つのを恥ずかしがらなければいけない、そんな日常には戻るな」「半数の人が初体験でコンドームを使わない、そんな日常には戻るな」という強烈なメッセージを発信しています。世界には戻りたい日常の他に、戻ってはいけない日常があり、それに気づかせることで、Durexブランドの果たしている役割(パーパス)を強烈に伝えている素晴らしいアウトドア広告です。
困難はアイデアの母であり、欠乏や不足はアイデアを生み出すエネルギーになることができます。外出や移動が制限されるこの時期だからこそ、アウトドア/交通広告に新しいアイデアのチャンスが広がっていると考えたいと思います。
第4回「Metro Ad Creative Award」(応募締め切りは2021年1月15日13時)の詳細はこちらから。
木村健太郎氏
博報堂 グローバル統合ソリューション局長
博報堂ケトル 取締役/エグゼクティブ クリエイティブディレクター
1992年博報堂入社。戦略からクリエイティブ、PR、デジタルを越境した統合的なスタイルを確立し、2006年博報堂ケトルを設立。従来の広告手法やプロセスにとらわれない「手口ニュートラル」というコンセプトで、アイデアを沸かして世の中を沸騰させるコミュニケーションを提案・実施している。現在は、博報堂の海外部門のクリエイティブを統括するチーフクリエイティブオフィサーを兼務。
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