若い世代への金融資産の移行を促す可能性
野村資本市場研究所の野村資本市場クォータリー 2014 Summerによると日本の個人金融資産は1630兆4045億円であり、その60%以上が60歳以上の高齢者によって占められているということである。LINEのユーザーにはまだ高齢者が少ないが、筆者は最近「孫と会話するためにLINEを始めた」といった話をよく聞く。
これは主に祖父・祖母側の欲求によるもので、孫側にはあまりつながる直接的なメリットはないのではなかろうか? しかし、LINE Payが出てきて直接送金が出来るようになると話は別であろう。会話を通じて欲しいものを買ってもらえたり、お小遣いや、お年玉がもらえるとすれば積極的に祖父・祖母ともつながるのではないか。
これは、家族の絆をより強化するという側面を持つと同時に、若い世代への金融資産の移行という側面をもつ。そしてそれにより経済が活性化されるという可能性が生まれる。大学生の仕送りや、中高生のお小遣いはLINE Payによって送られることが当たり前、その代わり親は子供とのコミュニケーションを担保できるというWin-Win関係の構築も見えてくるのである。
一方で多くの問題が発生する可能性も
決済とコミュニケーションが直接つながることは、利便性を増す一方で大きなリスクを伴う可能性がある。LINE Payは「セキュリティシステムとして、1)LINEとは別の2次認証パスワード 2)Apple Touch ID (AppleタッチID)による指紋認証でのパスワード照会(iPhoneのみ) 3)PCサイト利用時のスマートフォン認証を採用予定です。これにより、安全・安心にご利用頂ける決済機能を実現いたします」ということであるが、筆者は以下のような事象が発生する可能性があるとしてあらかじめ警鐘を鳴らすとともに、新しい経済圏確立のために関係者の余念なき準備と不断の改善をお願いしたい。
「孫なりすましアカウント」の発生:高齢者に対し、LINEのアカウントを悪用した新型の詐欺の発生が懸念される。これは全くの他人が「なりすます」ケースと実際の孫のアカウントが乗っ取られるケースの両方が考えられる。現在もなりすましによりプリペイドカード購入詐欺の事例が報告されており、このような事例が被害を生まないような教育も必要であろう。
マネーロンダリング:LINEは当初からグローバルを意識し国際決済も視野に入れていることから国際間の資金移動や不正に得た資金の浄化などに活用される可能性が考えられる。親しい間柄の決済を装って行われる決済が実は全く違う目的で行われる不正なものであるようなケースも現れるのではないか?
上記のようなリスクもあるが、生活する上で考えると非常に便利になりメリットがはるかに上回ると考えている。電子マネーやそれに伴うSUICA/PASMOなどのサービスが普及したのはそう昔ではない。皆さんの生活の中でも例えば電車に乗るのに切符を買って、改札で駅員に切ってもらう時代に戻るという事は考えられるであろうか? かなり不便になると考える人のほうが多いのではなかろうか。
また、今回の発表資料を見ていただくとわかるのだが、発表言語は日本語でも、資料はすべて英語でできているのである。当初からグローバルを目指すサービスとしては、少なくとも資料は英語で統一するという事が今後のスタンダードになってくるのではないだろうか。グローバルを見据えたLINEのライフライン化からしばらく目が離せない。
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