【前回のコラム】「「作品」と呼ぶのをやめませんか。(新年特大号)」はこちら
バブル直前、まだ僕がど新人の頃。
上司と先輩に銀座の高いしゃぶしゃぶ屋に連れてってもらいました。
それぞれに数枚の肉の載った皿が置かれて、「ここの勘定から逆算したら、これ1枚千円ぐらいじゃないか」などと話していました。
終盤になって、六本木のクラブに行くから予約しろと言われ店の電話を借りるために席を立ったのですが(携帯がない時代)、僕の皿に肉が1枚だけ残ってました。
電話をしていると席の方で笑い声が聞こえたので、(何かやってるな)という予感。
戻ると、僕の皿の肉が千円に変わってました。
あたかも肉が千円札に化けたかのように、うまく肉汁などが浸してあって。
当時の上司だった安藤輝彦さんが、部下の肉を食って、その代金として千円を置いたのです。
仕方がないので、僕はその千円をしゃぶしゃぶにして食いました。
お札というのはなかなかすごくて、歯で咬んだぐらいじゃちぎれないんですよ。
なので、そのままカタマリを飲みました。
その話を、30年近く経つ今でも、いろんな方からされるんですよ。
「あれはすごかったねー」と。
安藤さんにも何度も「おまえはすごい」的なこと言われたんですけど、本人は、ごく当たり前というか、それ以外にどうしろって言うの?ってかんじ。
まあ当時の僕らは、毎日そんなことしながら仕事してました。
上司とか周囲を楽しませる、驚かせる、ということを普通にやりながら、自分を揺さぶりながら、コピーを書いていた気がします。
とにかく大量にメシを食う(僕は入社してから20キロ太りました!)。
食い切れないぐらい注文して、余ったら若手が残りを平らげるのがルールになっていて、少食の先輩はその後会社のトイレで吐きながらコピー書いてました。
僕は正午ぐらいまで新宿2丁目で飲んで、そのまま会社行ったりしてました。
何か違うことしないと、何か新しいことしないと、というプレッシャーと使命感の中で、自分を壊し続ける、自分スクラップ&ビルドみたいなことをやっていたんだと思います。
そして、サプライズの提案をする。
ここ数年、広告業界では「サプライズ」という言葉がビッグワードになっていますが、昔はそんな言葉はありませんでした。
言葉にならないくらい当たり前のことだったからでしょう。
「良いコピーをどうやって書くか、ということより先に知っておかないといけない話。」バックナンバー
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