今回は「dof流」の仕事の進めかたについてお話をさせていただきます。
とは言っても、必ずやっているお約束事や決まりごとがあるような話ではありません。少なくとも、外資系のエージェンシーにあるような思考のプロセスや、企画作業の進めかたにルールのようなはありません。強いて言えば、いつも笑いの絶えない、楽しい雰囲気があること、そして仕事のあとは必ずお酒(特にハイボール)がある、といったところぐらいでしょうか。
仕事の進めかたではなく、もっと「仕事のスタンス」に近い部分で「dof流」とも言えるものをご紹介したいと思います。
「クライアントは運命共同体」
ビジネス上、僕たちの仕事はクライアントさんや、エージェンシーがお仕事を発注して下さって成立していることは事実としてあるのですが、基本スタンスとして、クライアントやエージェンシーは我々にとっての「パートナー」であり、「運命共同体」であると考えています。そういう意味で、結果を出してなんぼ。どんなに広告の表現が話題になったり、評判が良かったり、広告賞の類いのものを受賞したとしても、モノが動かなかったり、結果を残さなかったらキャンペーンとしては失敗であると思っています。
そのために、ともかく目的を達成するための正解はなんなのか、徹底的に考え抜いて提案するようにしています。最初のオーダーが「テレビCMをやりたい」「イベントがやりたい」というものだったとしても、それが目的達成のために必要ないと思ったら、「広告をするのは止めましょう、無駄です」と提案することもあります。そして、クライアントが間違ったことを言っていたらケンカも辞さず、徹底的に戦う(日頃の人間関係が構築出来ていれば案外ケンカにはならないものです)。
僕のこの考え方のベースには、どこまでいっても、広告はクライアントのものである、というところがあります。広告(最近は広告に限らないですが)は結果を出すための歴とした投資であり、リスクをともなうものです。オーダーを受けた我々はその投資効果を最大化するミッションがある。決して僕たちがやりたいことを実現させるためのモノではありません。そこに自分で創作活動をしているアート作品との大きな違いがあると思います。自分自身で会社を経営するようになって、以前より強くこの思いを持つようになりました。もちろん、だからと言って、クライアントの言いなりに仕事を進めたり、モノをつくればいいということではなく、プロとして一番いいと思える手段や表現を提案することが必要だと思います。
このスタンスを貫く上で一番大事なのは、クライアントの内情、置かれている状況を的確に把握することだと思っています。徹底的にヒアリングに時間をかけて、オリエン資料には書かれていない、コトバには出て来ない部分まで吐露してもらえる関係づくりが必要になります。解決策に至る手前の、問題がどこにあるのか発見するところからはじめないといけないケースも多々あるので。よく企画には「ビッグアイディア」が大事、と言いますが、僕はそれ以前にクライアントに対しての「ビッグ愛」が一番大事だと思っています。コトバ的にダサいのと、ときどき立場を忘れてついついクライアントとタメ口になってしまったりするのが問題なんですが(笑)。
そして、本当に優秀でいいクライアントさんは大枠のところでのコミットをするものの、最終的なディテールにおいてはボクらにある程度任せてくれることが多いと思います。任せる覚悟が出来ているというか。ディテールの違いによってどれぐらいの違いが生ずるのかは、プロである我々にしか判断出来ないところがありますし、それがボクらのモティベーションにも繋がるところでもありますので。些末なところに至るまで細かくディレクションされると気持ちが萎えてしまうのは、子どもが勉強のやりかたや箸の上げ下げまで指示されて拗ねてやる気をなくすのと同じだと思います。
こうしてお互いにいい緊張感を持ちながら、それぞれの役割をきちんと全うすること、それが一番ハッピーな仕事の進めかただと思います。
ということで、クライアントのみなさま。
本当に信用の出来るパートナーを見つけることが出来たのなら、きちんと議論をした上で、ある程度のことを任せたほうがきっといい結果が生まれると思いますよ(笑)!
どふぞ、みなさまがハッピーな仕事ができますように。
【齋藤 太郎『世界一ハッピーな会社」をめざして』バックナンバー】
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