【前回のコラム】「日本経済をけん引する名古屋——【対談】愛知広告協会・大島寅夫理事長×夏目和良副会長」はこちら
広告界最大級のイベント「全日本広告連盟大会」が今年5月、名古屋市で開かれ、62回の歴史で過去最大の1600人が来場しました。主催は広告界の業界団体である公益社団法人全日本広告連盟(全広連)です。この企画は、全広連と宣伝会議とのコラボレーションの一環で、名古屋大会のレポートや地域ごとの取り組みを紹介します。
売れる数しか作らない
若い頃は、「トヨタ生産方式」を築き上げた大野耐一さん(元副社長)や鈴村喜久雄さんらのもとでみっちり鍛えてもらいました。上司と部下の関係というより、師匠と弟子と言った方が合っていたと思います。
当時、自動車に限らずあらゆる日本の製造業はアメリカの影響を強く受けていました。その代表が「フォード方式」です。彼らの常識では、機械をフルに動かす、稼働率をいかに上げるかが最重要とされていました。遅い機械は高速化、あるいは自動化し、同じ人員でいかに多くの製品を作るかを追求していました。
そんなとき、トヨタは変わったことを始めました。大野さんは「売れるだけしか作ってはいけない」と言うのです。当然機械は止まります。不具合があると、たびたび機械を止めました。高速大量生産のフォード方式が常識とされる中で、我々は必要数をいかに少人数でつくるかが大事だと教わってきたのです。新聞などで「トヨタのやり方は理屈に合わない。早晩つぶれるだろう」と書かれたものです。
必要なものを必要なときに必要な分だけ用意する「ジャスト・イン・タイム」の考え方を提唱したのは創業者の豊田喜一郎さんです。創業が1937年のことで、わずか8年後に終戦を迎えました。喜一郎さんは、「3年間でアメリカに追いつくぞ。そうしないと、日本の自動車産業は成り立たない」と檄を飛ばしました。でも、お金もなければ技術も設備もない。そんな中で、「必要なときにつくるのが最も効率が良い」となった。これが「ジャスト・イン・タイム」の発端です。
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