コラム

アスリートとつくる、熱量の高いファンのコミュニティ

あえて実現の難しい場所に非日常空間を作る、レッドブルの大会に注目してしまう理由

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非日常の空間で観客を競技の虜にする

モータースポーツの観客は高齢化してきており、「レースがあるのでサーキットにきてください」と伝えるだけでシーンの活性化とファン拡大に向けた動きを作るのは難しく、より身近な形でモータースポーツ文化を伝えていかなければならない。そのような中、ある種非日常的な空間でこのような体験告知活動を行うことで、多くの人にF1というスポーツの面白さを伝えられたことは間違いない。

さて、同じモータースポーツでもここから触れる競技は通常のサーキットで行われるものとは異なる。常にあるテレビ番組においては最大級の喝を入れられていた競技だ。私も仕事柄F1を含め多くのエキストリーム競技を見てきたが、自分の中ではフリースタイルモトクロス(FMX)こそ究極のエキストリーム競技だと思っている。

少し競技に触れると、FMXとはモトクロスバイクでキッカーと呼ばれるジャンプ台からジャンプし、空中で多彩なトリックを繰り出す競技。その高さは10メートルを超え、距離は25メートルにもおよぶ。そのFMXの最高峰の世界大会に、レッドブルが主催するRed Bull X-Fightersという大会がある。2001年にスペインで初開催され、2007年よりワールドツアーとして世界を転戦、そしてアジアでの初開催となった大会は、大阪市にて2013、2014年の2年間開催された。

大阪城公園西の丸庭園で行われた「Red Bull X-Fighters 2013」(2013年6月)
写真:Red Bull Content Pool

この競技はJ SPORTSやフジテレビでも放映されているので、映像でデモパフォーマンスやショーケースを見たことがある人はいるかとも思うが、大会をリアルに見たことがある人は意外と少ないかもしれない。

しかし実際には、レッドブルイベントの中でもこの大会が一番好きですという人が多いくらい、見た人をあっという間に魅了し、興奮の渦に巻き込む、それがこの競技の凄さだ。

私自身もこの競技に深く関わってきたが、観戦する際には常にジェットコースターに乗っているような気分になり、大会主催者側にいても本当に気が抜けず常に手に汗をかいている状態である。観客の行動を観察してみるとさらに面白い。大抵の人が大きな声を出さずにはいられない状況になる。

さて、競技自体のプロフェッショナルなテクニックも勿論だが、この大会の特徴は、開催地の多くが各国の名所や文化的遺産として登録されている場所であることだ。

継続的に展開するスポーツは固定的なスポーツ施設や競技場での展開が大事である。しかしながら、このような新しいスポーツ大会においては従来のような固定的な競技場はない。

そこでスポーツエンターテイメント性をどう充実させるか、ブランドイメージをどう伝えていけるかが重要になり、スポーツシーンと連携を図りながら、その体験を唯一無二にし、既存のみならず新しいファンとのエンゲージメントやそこから拡散されるメッセージをどう作るかが大事となる。つまり、非日常な場面を作りながらスポーツ性を極め、スポーツとブランドの両方の発展を追求していくことが重要である。

大会開催場所の話になるが、スペインやメキシコの闘牛場、ロンドンのバタシー発電所跡地、エジプトのスフィンクス前、モスクワの赤の広場、ドバイのブルジュ・ハリファ、南アフリカのユニオンビル前など、各国がものすごい名所と交渉してくると、日本への期待も当然高まる。本社チームからのプレッシャーがとてつもない中で相当交渉したことを覚えている。

数カ所の候補地を提案し、視察しても納得されずお蔵入りした場所も多数ある。最終的に数年かけて開催まで到達した場所は、大阪城公園西の丸庭園だった。アジア初のイベント開催で、世界中のトップライダーが集まり、世界中に配信される場所としては最高のロケーションだったが、決まってからも多くの課題があり、行政、警察、地元との連携でなんとか開催することができた。

このシーンを盛り上げようと力を注いだ全国からのライダーコミュニティやこの大会を支えたパートナーからのサポートが、大会の成功に大きく起因したことは確かだ。

メキシコの闘牛場、モスクワの赤の広場、エジプトのスフィンクス前で開催された様子
写真:Red Bull Content Pool

次ページ 「リアルな体験の後のストーリーづくりも重要」へ続く

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