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コラム

燃えない、スベらない。パーパス・ブランディングの極意とは

「ブランドパーパスとは、ソーシャルグッドのことだ」。その誤解を解くために、書きます。

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ポカリとハウス

「本業」からブレないという意味において、日本のブランドで、はっきりと自分たちのブランドパーパスを自覚しながらそれを起点にコミュニケーションを展開しているなあ(あくまで想像ですが)、といつも感じるのはポカリスエットです。

「それが何かはよくわからないが、とにかく何かに乾いていて、何かに汗をかいている」。中高生の時って、そんな感じでしたよね。それはきっと、時代が変われど変わらない普遍的な真実。ポカリスエットの「水分補給」を最も必要としている人は誰か。そのことについて考えた時、確かにそこには中高生の存在が浮かびます。

「ガチダンス」にせよ「ポカリNEO合唱」にせよ「手を伸ばそうよ」にせよ、ポカリが展開するコミュニケーションの背景には、「青春の渇きをうるおし、ひとりひとりの可能性を引き出す」そんな明快なブランドパーパスの存在を感じます。(あくまで想像ですが)

そしてポカリスエットは、いつも「水分補給」というブレない「本業」を通して、見事にファンクショナル(機能的)にもエモーショナル(感情的)にも、青春の渇きをうるおし、若さが持つ眩いばかりの可能性を引き出している。そう感じます(あくまで想像ですが)。

また最近、ハウス食品の創業理念をはじめて知ったのですが、これがいいんですよね。「日本中の家庭が幸福であり、そこにはいつも温かい、家庭の味ハウスがある」と書いてあります。これはまさにブランドパーパス。カレーにせよシチューにせよ、ハウス食品の出している商品は、まさにこのブランドパーパスを具象化したものですよね。まさに「本業」。だからハウスはブレずにトップブランドであり続けているのか。そう思いました。しかもいま書いていて気付きましたが「ハウス」という企業名もパーパスが具象化されたものですね。なるほど(あくまで想像ですが)。

さらに、このハウス食品のブランドパーパス(と勝手に言っちゃってますが)を時代のレンズを通して見つめた時、つまり、「今、日本中の家庭が果たして幸せなのか?」「そこに温かい家庭の味があるのか?」「では今の時代の、温かい家庭の味とは?」。そんなことを考えた時、さらに未来への視界がひらけた感覚になり、ブランドの可能性を感じます。

このように、ブランドパーパスは「今の時代に、自分たちのブランドがすべきこと」を指し示す言葉にもなると同時に、ブランドの未来をも指し示し、未来について考えるための問いを立てやすくしてくれる存在にもなります。つまり、「我々が、商品を通して世の中で果たすべき役割はこれだ!」と強く確信できるパーパスをしっかり固めておくと、効果的なマーケティング戦略、コミュニケーション戦略やアイデアについて、圧倒的に考えやすくなるんです。少なくとも、すぐに答えは出なくても「今、我々のブランドは何をしないといけないのか」「これから先、何を考えなければならないのか」ということに関する問いは、圧倒的に立てやすくなると思います。

「ブランディング=長期的なイメージ形成」ではなく、「ブランディング=商品を売るための最短距離」だと教えられ、どうやってクライアントのブランドを強くしていくのか、ということに向き合ってきた当社のような外資系の戦略プランナーやクリエイティブディレクターは、どんな仕事であってもまず、「このブランドのパーパスってなんだろう?」ということから考える傾向が強いと思います。それはおそらく、パーパスを起点に考えることの、ある種の旨味というか利便性のようなものを、感覚的に知っているからかもしれません。

……前回「書きます!」と宣言していたことの一部しか触れられずに終わってしまいました。次こそは、もう少しパーパスに基づく戦略やアイデアのつくり方について触れていきたいと思います。

それでは、また次回。