中心のある欧米 多視点の日本
漢字かな交じり文としての日本語は、非常に視覚的な言語であると言えるでしょう。そしてその見分けをすることが言語的に視覚能力を要求し、日本独特の複雑な視覚文化を創り出します。
たとえば、この視覚的な複雑さは特に日本の雑誌や漫画のレイアウトの特長にも見られます。日本の漫画には単なるコマ割りを越えた自由なレイアウトが特徴で、さまざまな要素が雑居しており、これを読むには文化的な学習が欠かせません。そこで示されている意味と余白を区別し、読み取ること、つまりゲシュタルト心理学でいう「図(意味)と地(背景)」を区別することであり、漫画のレイアウトの複雑さは日本語という言語の特長と切り離すことができません。
チームラボの猪子寿之氏がフランスのベルサイユ宮殿の庭と日本の屏風画を比較して、西欧のアートが決まった視点を中心において構成されているのに対して、日本のアートは多視点だと指摘したことは、この漢字かな交じり文の延長にある日本の漫画の複雑なレイアウトにも当てはまることでしょう。面白いのは、思想や政治と異なり、中心がないことがアートの世界では未熟と言われずに多様と解釈されるところです。日本の文化の多くが海外で「美的なもの」として捉えられることが多いのは、おそらくこのことも関係しているでしょう。
一方で日本のブランドのわかりにくさは、この図と地が西欧の考える中心がないためです。図と地が複雑なアートといえば、それが常に反転してしまうエッシャーの不思議な版画です。エッシャーは意識的にそれらが入れ替えられるようにしていますが、日本のブランドにおいては、言い換えれば中心となるような視点が多様でわかりにくいと言えます。日本のブランドは未熟なように見えて、単に視点に中心がなく多様な形なのではないかと思うのです。
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