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コラム

世界で活躍する日本人マーケターの仕事

世界で活躍する日本人マーケターの仕事(アダストリア上海 小澤隆行さん)後篇

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モノの買い方が根本的に日本と異なる中国の人々

―中国に来て日本と中国の違いをどのように感じますか?

全てです。生活全てが違います。朝起きて、何を食べて、どこでモノを買うか。どこで情報をとるか。こうしたすべてが違うと感じます。私が中国に来て、一番最初にやったことは中国の人たちがどのように生活をしているか知ることでした。

日本と中国の暮らしの違いを作る根底に、電子決済と物流があると思います。この2つが圧倒的に日本と違うと思います。お金の流れとモノの流れ。この基盤が中国国内ではある程度確立されていて、事業をする側にとっても、サービスを利用する側にとっても簡単にこのインフラに乗っかることができるわけです。

例えばこのインフラに支えられているからこそ見える、中国の人の購買行動に返品があると思います。例えば中国の人が服を買う時は、サイズに迷ったら全てのサイズをEコマースで買います。そして家に届いて試着して、その中でMサイズだけ欲しいとなったら、その他はいらないので残りはTmallのアプリ上で「返品」と押しておき、梱包されていた段ボールに戻して、それをオフィスやマンションの入り口に置いておけば、物流会社の人が来てピックアップしてくれるわけです。アリペイで一度は支払いを済ませたわけですが、お金はアリペイ側で止まったままで企業側には入金されておらず、7日間返品のルールがあるため、どんな理由があっても商品を返品でき、お金も戻ることになります。こうしたちょっとしたモノの買い方、デリバリーや返品に対する戸惑いなど、生活における全てにおいて利便性が日本とは異なります。

また考え方という意味で中国から学ぶ点はスピード感です。彼らのスピード感はすばらしいと思います。今はこれがいいから、今これやろうという考えです。7割くらいの完成度だけどとりあえずやりましょう、まずやってみてダメだったら直せばいいという姿勢で色々なことに向かっていく中国の人たちから学ぶものは多いです。

【オンライン“訪問”を終えて】

生まれも育ちも海外という小澤さんは英語に関しては全く不自由がないとのこと。ただし中国では英語が全く通じず、中国語を話せなければ生活も仕事もできない状況に追い込まれたようです。そこで取り組まれたことが、頻繁に使う言葉をノートに書いて、それを指差して相手に見せること。「掃除して」「声出しちゃんとして」といった仕事で使う言葉の単語帳をご自身で作られました。そして今では仕事をする上で支障のないほど中国語が使えるようになったとのことです。「言葉は心配するところではないかなと思います」というメッセージを最後にいただきました。

玉井博久

広告会社側(リクルート、TUGBOAT)のクリエイティブと、広告主側(グリコ)のブランド構築の両方の経験を生かして、デジタルを活用した顧客体験(CX)を手掛けカンヌライオンズなど受賞多数。著書に『宣伝担当者バイブル』(宣伝会議)、『「売り方」のオンラインシフト』(翔泳社)。2015年より5年連続シリコンバレーに、2018年より3年連続CESに、深圳、イスラエル、また米中のテックジャイアント本社に足を運び最新のデジタルテクノロジーを視察。得られた知見をマーケティング、Eコマース、コンテンツプロデュースに活用。シンガポールにてASEANのECビジネスを2年で10倍以上拡大させる。2012年より日本のポッキーの、2016年より全世界のポッキーの広告を統括。ポッキーは2020年に世界売上No.1*として、ギネス世界記録™認定。

*タイトル:最大のチョコレートコーティングされたビスケットブランド/2019年 年間世界売上高 推計$589,900,000 (国際市場調査データによる)
* 国際市場調査のデータ分類上、クリームでコーティングされたビスケットも含まれる