コロナによって旗艦店オープンの課題を振り返る時間ができた
―ブランドのローンチが2019年12月というとコロナの影響はなかったのですか?
中国でコロナのロックダウンが始まったのは2020年1月25日です。2020年2月、3月は完全に上海はロックダウンされました。街から人が消え、地下鉄も誰も乗っておらず、店も営業していない状況となりました。ただ私たちの旗艦店は、店舗が入っている商業施設から休業の指示が出ていなかったこともあり、勝手に私たちの判断で閉めることができないので、お店は営業し続けました。しかしお客さんは来ませんので、最低人数で店を「開けて」いる状況でした。
オープンの大成功から1カ月後にコロナで2か月間お客さまが来ないという状況に、当初は「なんでこのタイミングで?」と思っていました。ただコロナがあるとはいえ、中国マーケットは再度復活すると思っていたので、そのタイミングでしっかりアクセルを踏める様に準備の時間にしようと考えました。
思えば、オープンが予想以上の大成功だった一方、色々な問題も出ていました。商品不足、店舗のオペレーションの不十分、会社としてのインフラの未整備など。もしコロナがなくこのまま続いていたら、どこかで店舗運営が破綻していたかもしれないという1ヶ月だったことは否めません。逆にコロナでお客さまが一気にひいたタイミングを迎えたことで、課題点を整理して時間をかけて解決していきました。
オープン前に考えたことはすべてが想定にすぎません。こういうお客さまがくるだろう、こういう商品が売れるだろう。すべては「だろう」なのです。それが1カ月ではありますがデータとして実績が出ているので、想定ではなく具体的な事実を把握できます。実際は想定していたよりも年齢層が若く、女性が思ったより多かったです。またどんな商品が売れているということも分かったので、これらを洗い直して、お店の再開後の商品構成を変えていきました。
上海のロックダウンは2020年の3月中旬くらいまで続きました。ただそこから社会は正常に動き始めて外に出てよくなり、会社も出勤できるように。4月には清明節という連休があるのですが、そこからお客さまが入り始め、4月の動きを見ながら、5月のメーデーの連休には完全にお客さまがお店に戻ってくると感じたのでした。そこで5月の連休に向けたイベントの仕込み、商品の準備、プロモーションの準備を一気に進めました。
「世界で活躍する日本人マーケターの仕事」バックナンバー
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