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コラム

澤本・権八のすぐに終わりますから。アドタイ出張所

『窓辺にて』の脚本は、僕の心の奥底をわかっている感じがした(稲垣吾郎・今泉力哉)【前編】

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「朝起きると、植物がメラメラしているんですよ」

権八:植物をすごく熱心に育てていますよね。

稲垣:まあ、コロナ禍もあったと思うんですけど。

澤本:家の中にそんなにいっぱいあるの?

稲垣:そう。元々、お花を飾るのが大好きで。毎週お花屋さんに配達してもらったりとか。あとは結構、コマーシャル撮影の現場とかでいろんなお花をいただくじゃないですか?だから、植物が家にあるのはいいな~、と思って。お花の写真を撮るのも好きだったし。そんなことをやってるうちにグリーンの方にも興味を持ちだしまして。いわゆる「観葉植物」ですね。

澤本:はいはいはい。

稲垣:テラスみたいなのがあるので、そこに色々庭木を植えたりして。グリーンを育てることが最近楽しくて、ハマってますね。もうね、なんか植物がメラメラしてるんですよ、朝起きると。生きてるエネルギーを感じて、お世話していると逆にこっちがパワーをもらえるというか。

澤本:へえ~!

稲垣:楽しいですね。植物によって全然性質も違うし。それに今、癒やされてるというか。

権八:それを見ながら、ワインを飲んで?

稲垣:まあ、夜はそうですけどね(笑)。

一同:あはははは!

稲垣:植物、いいですね~、グリーンが。植物って言っても、知らないことが多すぎたので。

権八:なんか、「お世話をするのが大変そう」っていうイメージから入っちゃいます。難しそうって。

稲垣:そうですね。でもまあ、水やりと、光と、風通しと。そういうものに気をつけていれば。失敗もしますけど、新芽が出てきたりとかするのがかわいくてしょうがないですよね。やっぱり応えてくれるし、ペットと一緒ですよね。

権八:ペット……。あれ?

稲垣:ペットは昔、猫を飼っていたんですけど、植物を始めてからまた久々に猫とかワンちゃんとかもいけるかな、と思い始めて。

権八:あれ、ヒロくんて……?(笑)

稲垣:ヒロくんは、人間です。

一同:あはははは!

権八:すみません、そうか。たまに遊びにくるのか。

稲垣:たまに遊びにくる、僕よりもひと回りも上のおじさまがいます。

権八:あ、そうでしたか。

澤本:ペットではないから(笑)。

権八:勘違いしました(笑)

稲垣:でも、自然が好きになり始めませんか?40ぐらいから。山に行ったり、家の近所をお散歩したり。ゴルフなんかもそうですけど、緑とか自然とか、こういうザワザワした社会の中で生きていて、どちらかというと、こう、大きな自然の秩序の中に自分の身を投じたい、というか。そういうことが最近はなんか……。ちょっと、おじいちゃんみたいですけど(笑)。

権八:吾郎さんはやっぱりね、なんていうか「真っ当な方」ですよね。

一同:あはははは!

稲垣:確かに、そういう「ふつうのこと」を好むというか。あんまり芸能人ぽくないかもしれない。

権八:あ、そうそうそう!そういう意味です。

今泉監督は「どこにも行きたくない人」

中村:じゃあ、今の話を受けて、今泉監督も20秒自己紹介を(笑)。よろしいですか?

今泉:はい。

中村:いってみましょう、では、どうぞ!

カーン♫

今泉:え~、映画監督の今泉力哉です。自分はあんまり自然には向かってはいないんですけど、ほぼ年が一緒の奥さんがめちゃくちゃ自然に向かっていて、庭でレモンとか育てていて。昨日は夕食の唐揚げ的なものに「庭のレモンだよ」って言われたやつを絞って食べたら、美味しかったです。

カンカンカン♫

一同:あはははは!

稲垣:素晴らしい!え~、奥さんに会わせてください 。

一同:あはははは!

今泉:ちっちゃい庭なんですけど、最初は土とかも大変だったので、一回業者に入ってもらったりして。でもまさに、さっき稲垣さんが言ってたみたいに、山とか島とかに奥さんが向かっていて。

稲垣:ああ~!気が合いそう。

今泉:この間、瀬戸内国際芸術祭に家族旅行で行ってたんですけど。ずっと山に行きたいって言ってたのに、島に行ってからは「山じゃなくて、やっぱり島だな」と言い出して。将来、島に住みたいって話をずっとしてます。

稲垣:わからなくはないなぁ……。

今泉:確かに、年を取ってからは人の疲れを感じるのはわかりますね。

稲垣:監督はまだないですか?自然とか。

今泉:なんかもう、基本は出不精なんで。「どこにも行きたくない人」なんですね。もう、「こもっていたい」っていうのはあるんですけど。でも、意味はわかりますし、連れて行ってもらったら「確かにいいな」と思いながら過ごしてみたり、という感じです。

権八:なるほど。

澤本:確かに、監督が外に出ていらっしゃるイメージがあまりないですね。

今泉:そうなんですよ。でも、サッカーとか野球はめちゃくちゃ見ていて好きなんですけどね。スポーツの話をすごいテンションで話したりすると「スポーツのイメージがなさすぎる」って言われて。

一同:あはははは!

今泉:「野球とか見なさそうですね」とか、すごい文化系みたいに言われるんですね。自分でするのは得意ではないけど、サッカーも野球もすごい楽しくて。で、先日の天皇杯の決勝がすごく感動的な試合で。ボロボロ泣きながら見ちゃって、という(笑)。

一同:へえ~!

稲垣:インドアなイメージですもんね。

権八:「超インドア」なイメージ。

今泉:下手だけど、するのは好きですね。子どものサッカーの付き合いとかで、公園に連れ出されてやるのは好きなんですけど。

権八:若葉竜也くんは今回、サッカー選手での出演ですか?

今泉:あれはなんかね、「スポーツ選手」という感じでなんとなくごまかしていて。ある程度、体が細くてもできるプロスポーツ選手ってなんだろう?と。具体的にはしなかったですけど、なんとなくサッカー選手かな、とは思っていました。

稲垣:そうかそうか。若葉くんの雰囲気だとね。

今泉:そうなんです。細いプロスポーツ選手って、サッカーか陸上系かな、みたいな話をしてましたね。

稲垣:あとは、ボクシングとかになっちゃいますもんね。

今泉:まあでも、ガタイがいいですからね。

権八:若葉くんは若干、プロアスリートっぽくないというか(笑)。

今泉:わかります、わかります。

権八:でも、面白かった。あ、そうだ!

澤本:なんの話をしなきゃって……。ねえ?

権八:まさに!

「脚本は、稲垣さんを当て書きしました」

中村:そう、映画ですよ!え~、来たる11月4日に公開となる映画『窓辺にて』でタッグを組む、稲垣さんと今泉監督ですが。それまでお二人に面識とかはあったんですか?

稲垣:2019年ぐらいの東京国際映画祭で、ちょこっとすれ違ったような感じで。その時にご挨拶もさせてもらったかもしれないんですけど……。僕はその頃から監督の作品を見ていて大好きでしたし、あとはちょうどその頃、雑誌の対談で。

今泉:ある雑誌で、稲垣さんが映画を紹介するコーナーがあるんですけど。コロナが広がって、劇場が止まっちゃったから新作の紹介も止まる、という時にお話をいただいて。その雑誌で4回にわたって稲垣さんと自分の対談を載せてもらった時に、オンラインでお話しさせてもらったんですね。それが、ちゃんとした面識といえば、それが最初になりますね。

中村:実は、監督の中では稲垣さんに結構インスパイアされたものがあって、と。

今泉:もうね、実はプロデューサーからこの映画の企画の話をいただいていたんですよ。映画について考えながら、稲垣さんとのそういう場をいただいて。インタビュー中に稲垣さんから「もし、僕を主演で映画を撮るなら、どういう役ですかね?」とか振られたけど、こっちはもう企画が動いていて。でも、稲垣さんは多分、知らなくてですね……。

一同:あはははは!

今泉:「これ、今どう答えたらいいんだ?」みたいな(笑)。多分、まだ触れない方がいいって言われて。だから、ごまかしながらやってました。

稲垣:それからまた、3年ぐらい経って。

権八:そんなに?

今泉:いや、1、2年ぐらいですね。2020年に対談して、2021年なので。1年半とかですね。プロットとかはもっと前からやってましたけど。

稲垣:そっかそっか。その頃から企画自体は水面下で……。僕は知らなかったけど(笑)。

権八:「やっぱり、吾郎さんで撮りたいな」っていうのは、どういうモチベーションだったんですか?

今泉:それまでにも、稲垣さんは僕の作品を見てくださっていたり、きちんと会ったことがないのに「今泉さんはきっと、優しい人だ」みたいに褒めてくれたりしていて。あとは、喜怒哀楽が激しいイメージもなかったので、ご一緒するとなったらある種の波長とか温度感をわかってくれそうだな、と。自分がやっている作品を面白がってくださっているってことは、「感情が出すぎない役」みたいなものをやる時にも理解してもらえるのかな、と勝手に思っていて。

権八:なるほど!

今泉:だから、「稲垣さんでやる」ということを前提で“当て書き”でホン(脚本)を書いていく、という感じでした。

権八:これね、吾郎さんもなんかのインタビューで答えていたけど。「稲垣吾郎そのもの」ですよね、これ!(笑)

稲垣:そうなんですよ。不思議でね、こればっかりは。

権八:あっはっはっは!

「なんで、考えてることまでわかってんのかな?」

稲垣:僕をイメージして当て書きしてくれるのって2通りあると思っていて。まずは、世間でイメージする「パブリックイメージ」としての僕ですね。でも、今泉監督はそうじゃなくて、なんだか本当に僕の心の奥底をわかってる感じで。僕が表現しようとしてることとか、つくっているキャラとかではなく、「なんで考えてることまでわかってんのかな?」っていう、不思議な体験でした。「そこを出した覚えはないんですけど?」みたいな(笑)。

権八:あはははは!

稲垣:でも、バレてるんでしょうね、そういうのって。

権八:そうなんじゃないですかね~?

稲垣:こういうことを本当に言いそうだなって感じがしません?僕が。

権八:確かに。しました。

稲垣:今、僕がここで喋ってる、この感じですよね、たぶん?

権八:そうそうそう(笑)。

稲垣:不思議ですよね。

今泉:写真集とかエッセイに書かれている言葉を、脚本を書く前に読んだりはしましたね。写真を撮っていることも含めて、本人に近づけつつ、寄り添いつつ。もちろん、感情があんまり動かない役どころなので、脚本を読んだ稲垣さんが「全然理解はできないけど、やります」って言う可能性もあったわけなんですけど。でも、最初の衣装合わせでお会いした時に、「これ、僕の知ってる感情です」みたいな。わかりますよ、みたいな感じで。「僕、『もっと怒っていいのに』とか言われる時に、『まあ、いっか』ってなっちゃうんですよ」みたいなことを最初におっしゃっていて。「あ〜、良かった。こういう感覚を知ってる人だ」と思って、そこから始まった感じでしたね。

稲垣:ここの感じに共感できるかどうかって……。分かれますよね?まあ、これは映画の内容になってきますけども。

一同:う~ん!

〈END〉後編に続く