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コラム

競合を勝ち抜くための「もう片方のスキル」

競合プレゼンを勝利に導くプランナーが注意していること

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競合プレゼンに勝ち抜くために必要なことについて、職種別、また年代別に紹介する本連載。今回は「プランナー」編の後編です。前回は、あらゆるプランナーに共通して重要な「わかりやすさ」について説明しましたが、今回はプランナーの職種ごとに注意するべきポイントを解説します。

競合プレゼンに勝つメソッドを詳しく知りたい方は書籍『競合プレゼンの教科書 勝つ環境を整えるメソッド100』をご覧ください。

戦略プランナーは『スピード違反』くらいでちょうどいい

多くの提案は、見積もりや体制を除けば、主に次の3つのパートから成り立っています。

  • 1.考え方(課題設定/戦略など)
  • 2.提案のヘソ(コンセプト/コアアイデアなど)
  • 3.具体(表現/施策など)

競合プレゼンの採否を判断するにあたっての重視点を問うと、クライアントは「1.考え方」と「2.提案のヘソ」が大事と答えます。なぜなら、その2つは「立ち戻れる場所」であり、そこさえクライアントと代理店で握れたら「3.具体」は後でいくらでも変更可能だからです。むしろ、予算やスケジュールなどの諸条件の変更が頻繁にある現代では、提案通りに「具体」が採用されることは、ほとんどありません。

でも実際は、「具体」の完成度が採否に直結するパターンが増えてきています。理由は、ビジネス上の課題そのもの、あるいは、その解決策としてとれる手段が複雑化しているために「考え方」や「提案のヘソ」それだけで、提案の良し悪しを判断しづらくなっているからです。

「考え方」と「提案のヘソ」は抽象度の高い概念ですが、その名の通り「具体」は具体的です。だから「具体」を見て、リアルに成功のイメージがわかないと「考え方」も「提案のヘソ」も、採用する決断ができないのです。

具体とは、戦略とアイデアの良し悪しを判断するための「虫眼鏡」のような存在。だからこそ「具体」を詰める時間を確保するべく、社内業務全体の進行をマネジメントする必要があるのです。時系列的に早い段階で動く戦略プランナーの皆さんは、この事実を頭に入れながら、超特急で戦略(の方向性)を出さねばなりません。

目安は提案までのスケジュール全体の4分の1の段階で、「2.提案のヘソ(コンセプト/コアアイデアなど)」の大枠が決まっているくらいのスピード感だと思っています。全体の半分を過ぎてもそこが決まっていないようだと負けフラグです。

プロモーションプランナーは説明を通して『安心』を伝える

プレゼンにおいて、プロモーションプランナーが陥りやすい罠は、企画の「説明」に終始してしまうことです。もちろん、企画をわかりやすく説明することは大事ですし、ここまで「わかりやすいは大正義」とお伝えしてきました。

しかしながら、企画内容をわかりやすく説明するだけでは、実はクライアントインサイトを満たしていないのです。乱暴に言えば、クライアントは「企画を詳細に理解したい」とは思っていません。ここでのクライアントインサイトは「私を安心させてくれ」なのです。

クライアントは不安でいっぱいです。面白い企画を選べるか、滞りなく実施できるか、予算に収まるか、不安だらけです。必要なことは、自身の「経験」を交えて話すこと。「以前のケースではこうだった」「だからこれが企画の肝です」「これがやりがちなミスです」「このポイントをおさえれば大丈夫です」といった感じで、随所に経験を交えながら「安心」という読後感を残すのが、勝てるプロモーションプランナーのプレゼンです。

メッセージ(直接的に伝えること)とメタメッセージ(メッセージを超えて、結果として伝わってしまう真の意図)という概念があります。メッセージが直接的な企画の「説明」だとしても、それを通して相手に伝わるメタメッセージは「自分に任せてくれたら、間違いなく面白い企画を考案・実施できますよ、だから安心してください」であるべきなのです。

メディアプランナーが意識すべきは『上申』のしやすさ

メディアプランナーの提案資料は、はっきり言って難解です。直接プレゼンを聞いたとしても、ついていくのがやっと。まして資料を読んだだけで充分に理解することは、かなり難しい。それくらい専門性が高い領域です。

意思決定者に直接プレゼンできない場合、求められるのは「上申しやすいサマリー資料をつくる」能力です。多くの場合「提案内容を簡潔にまとめる」のがサマリーと思われていますが、実のところ、それだけでは不充分です。なぜなら、提案を受け取った後の、検討会議や上申に必要な情報が決定的に欠けているからです。

足りないのは「自社をどういう理由で選ぶべきか」という判断軸。代理店自ら、自社の提案を選ぶ理由を明示する(=クライアントの社内説明に使える武器を与える)ことが必要なのです。

例えば、自社を採用した際のポジ材料が「経験豊富なスタッフと安心の実行体制」だとします。逆にネガ材料が「フィーの高さ」だとします。「フィーの高さ」というネガ材料を打ち消す対策として、「業務開始後1カ月でスコープと金額の見直しをする」「ネット金額を開示して透明性を担保する」などが考えられます。そこまでの内容をサマリーに記載すると、クライアント担当者は社内説明の武器を得られます。

「◯◯社は経験豊富なスタッフが担当してくれるので、プロジェクトの立ち上げをしっかりサポートしてくれます。フィーの高さが懸念点ですが、そこは、短いタームで定期的に金額を見直すことで無駄を省いていきます」と、社内で説明できます。

サマリーも結局のところ、クライアント目線で書けるか、クライアントの課題や論点に沿って書けるかが大事です。「提案のまとめ」に加え「自社の採用理由(判断軸)」までを提示できるのが、完璧なサマリーです。

デジタルプランナーは『専門用語』と『略称』を控える

専門用語や略称には、本当に気をつけてください。「伝わった気になる」言葉の最たるものです。リテラシーや理解度が平準化されている社内会議で使うぶんには構いません。しかし、競合プレゼンは時間がないので、社内資料がそのまま提案資料になっていくことも多いのです。

そうすると、いつの間にか提案書に、専門用語や略称が満載となります。直すのも面倒なので、つい「これくらい理解できるだろう」「クライアントも詳しいはずだ」と思いがちですが、典型的な「だろう運転」です。目の前で向き合っている担当者のリテラシーは高かったとしても、その後ろには、レベルがバラバラな他のクライアントが控えています。その人々への想像力を働かせて、専門用語や略称は必要最低限に抑えましょう。

地頭の良い人は、平易な言葉に置き換えて説明できると言われます。普段の社内業務からそれを意識しておけば、本番でも焦ることはありません。

いかがでしたでしょうか?

まだまだ他にもお伝えしたいことはたくさんあるのですが、今日のところはここまでです。前編では全プランナー共通の話として「わかりやすい」がいかに大事かをお伝えしました。激化する競争環境の中で、広告会社の提供サービスは、これからもどんどん複雑高度化していくでしょう。だからこそ、これまで以上に「わかりやすい」を徹底できる代理店が、選ばれ生き残っていくのだと思います。プランナーとして一歩も二歩も抜け出すためにも、改めて見つめ直したいスキルだと強く思います。

次回、次々回予告

次回(8月10日)は「特別編」として、競合プレゼンを主催する側であるメーカーの方との対談をお届けします。本書『競合プレゼンの教科書』の内容を題材に、競合プレゼンからパートナーシップのあり方にまで言及しています。

そして次々回(8月17日)のテーマは、勝てる「ベテラン」になる。ベテランだからこそ出せる味、ありますよね。「味」とは「スキル」です。ベテランだからこそ気づける視点。ベテランだからこそできるコントロール。逆に、ベテランだからこそ陥ってしまう罠もあります。若い者にはまだまだ負けない!貪欲に勝ちを狙うベテランの皆さま、どうぞお楽しみに!

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プランナーに求められる「勝つ技術」が満載

広告業界やコンサルティング、ITなどのビジネス現場で行われている「競合プレゼン」「コンペ」「ピッチ」に勝ち抜く100のメソッドを体系立ててまとめた一冊です。ライバルに勝つためのポイントについて、提案の中身やプレゼンテーション技術ではなく、勝つ「環境を整える」点に着目。競合プレゼンが始まる前の「兆し」から始まり、オリエン、キックオフミーティング、ストーリーづくり、軌道修正、プレゼン当日、事後までのフェーズごとに、行うべきこと、注意すべきことを丁寧に解説しています。

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