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コラム

競合を勝ち抜くための「もう片方のスキル」

チャットGPTで競合プレゼンに勝てるかも!? 今こそセンタープレイヤーを目指せ

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競合プレゼンに勝ち抜くために必要なことについて、職種別、また年代別に紹介する本連載。今回は「若手」編の後編、そして連載の最終回です。
競合プレゼンに勝つメソッドを詳しく知りたい方は書籍『競合プレゼンの教科書 勝つ環境を整えるメソッド100』をご覧ください。

敗退を告げられても、一回粘ってみる

前回は、若手が競合プレゼンに臨む意義と準備段階で果たす役割について解説しました。入念な準備で臨んでも、負けるときは負けます。むしろその方が多いでしょう。

「今回は他社さんに決めました」と敗退を告げられたら、試合終了だと思っていませんか?

ダメでもともと「その決定は、何があっても絶対に覆りませんか?」と、一回粘ってみましょう。この話をすると「そんなこと言っていいんですか?」と聞かれるのですが、採用社決定後に粘ってはいけないなんて法律はありません。駄々をこねろと言っているわけではなく、一回粘ることによる意外な効果を知ってほしいのです。

例えば、よくよく聞いていくと、他社の勝利が「条件付き勝利」の場合があります。「この体制が組めるなら」「この見積もり金額なら」との条件付きで採用されているようなケースです。また採用社に対しても、クライアントが100%の信頼を寄せていない場合もあります。つまり「採用社を決めて実行に移ってみたけど、すぐに上手くいかなくなった」という状況が起こり得るのです。そうなると、こちらに声をかけてくれる可能性があります。

熱い粘りの姿勢を見せてくれたところには、別の案件を依頼してくれる可能性もありますし、そうやっていただいた仕事に懸命に取り組んでいれば、信頼と評価を得て、次のチャンスをくださることもあります。粘って悪いことはひとつもありません。「試合に負けて、勝負に勝った」は起こせます。簡単に引き下がるよりも、粘る方が圧倒的にかっこいいビジネスパーソンだと思います。

『それっぽい理由』で簡単に納得しない

敗退理由をクライアントに聞く際に注意したいのは、1〜2個の「それっぽい理由」を聞いて、簡単にわかった気になってしまうことです。基本的に、勝利も敗北も複層的に要因が絡み合った結果であり、勝因も敗因も「たったひとつ」ではなく「たくさん」あるというのが、書籍で提唱している基本スタンスです。

クライアントも、せっかく提案してくれた相手に不採用を告げるのは、心理的に抵抗があります。だから、敗退理由のヒアリングに際し、気を使ってあまり多くを言わない傾向もあるのです。そうなると「断りやすい理由」「言いやすい理由」で、その場を収めようとします。当たり障りのない理由だな、建前っぽいなと感じたら、もっと突っ込む必要があるのです。

その際、ぜひ「決定の場面」を問いかけてみてください。決定の「理由」ではなく「どの瞬間に勝敗が決したか」という「事実」を問う。例えば「途中まで色々と迷われたかと思いますが、どの瞬間に他社に決まったのでしょうか?」「どの瞬間に心が動きましたか?」と問いかけます。

プレゼンの順番にもよりますが「御社のプレゼン直後です」となったら、自社が地雷を踏んでいた可能性があります。今後のために、何が地雷だったのかをしっかり把握しておきましょう。

「採用社のプレゼン直後です」であれば、他社の提案が飛び抜けて優れていたと言えるでしょう。どこが良かったのかを詳しく聞き出しましょう。

「会議で議論して」であれば、会議出席者に刺さるポイントがあったことになります。誰が何を評価したのか、押さえておきましょう。「資料をじっくり見て」であれば、資料記載の内容が良かったと推察できます。具体的にどのページが良かったのかを聞き出しましょう。

このようにして、若手のうちから精度の高い「敗退理由」を蓄積していく。そうすることで、今後の成長速度は著しく変わります。

センタープレイヤーになろう

仕事には2つの立ち位置があります。「自分の職域に責任を持つ」立ち位置と「チームの提案全体に責任を持つ」立ち位置です。どちらが良いとか悪いとか、そんな話ではありません。自分の職域に責任を持って遂行する人も必要ですし、チーム全体の責任者も必要です。

実データ グラフィック 『競合プレゼンの教科書』意識すべき2つの立ち位置

ただ、あなたが将来的に、競合プレゼンでチームに勝利をもたらせる人材になろうとするならば。もし「勝敗を他人の手に委ねるなんて、まっぴら御免だ」と思っているならば。ぜひ「チームの提案全体に責任を持つ」立ち位置を意識してみてください。私はそれを「センタープレイヤー」と呼んでいます。あなたがどんなに勝利を願っていても、提案全体に責任を持つセンタープレイヤーのポジションにいないと、そもそもチームを勝利へ導けないのです。

競合プレゼンの意思決定領域は多岐にわたります。ときに自分の職域を超えた判断が必要になるものです。そして、職域を超えた判断こそが、最も難しく、最も重要で、最も勝敗に直結するものです。当然責任が伴いますし、実力も仲間からの信頼も必要になってきます。何かを判断することは、何かを切り捨てることです。チームメンバーから疎まれる覚悟や勇気も必要になってきます。でも、だからこそ、目指すべき価値のあるポジションなのだと私は考えています。

一般的には、営業職の役職者やベテラン社員が担うイメージがあるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。スタッフ職でも、若手でも、チームを引っ張る気概があれば、センタープレイヤーの素質ありです。今はまだそのポジションを担えずとも、この立ち位置を目指して業務に当たるかどうかで、ビジネスパーソンとしての成長速度は著しく変わります。

職種や年次は関係ない!自分がチームを引っ張って、勝利をもたらすのだ!そんな意気込みをもって競合プレゼンに臨む若手が増えることを願っています。

意外と「なんでもアリ」の世界

「チャットGPT」が世間を騒がせていますね。広告業界に限らずですが、どの会社も対応に苦慮し、試行錯誤している段階です。この手の「最近出てきたもの」に関しては、社会や会社が右往左往しているところをリアルタイムで目の当たりにするので、確立されたルール/お作法/方法論などないことは、肌感覚としてわかります。

一方で「競合プレゼン」は、長いこと業界に定着している制度・仕組みです。この手の「入社時から当たり前のように存在するもの」に関しては、なぜか「暗黙のルール」「当然のお作法」「確立された方法論」のようなものが出来上がっていると思い込んでしまいます。

しかしながら、競合プレゼンは意外と「なんでもアリ」の世界です。長いこと業界に存在しているのに、ルールは未整備。まして確立された勝利の方法論など存在しません。その証拠に、皆さんの上司や先輩は、毎度のように競合プレゼンに四苦八苦しているではありませんか(笑)。

そうなんです。若手だと遠慮も含めて、先輩たちがやっている戦い方を「そういうもんなんだ」と無条件に受け入れてしまいがちですが、戦い方など定まっていませんし、基本的にはケースバイケースの積み重ねでしかありません。

「競合に勝つ」という目的のために、取れる(取るべき)手段は無数にある。方法論など未確立で、まだ誰も実践していない勝ち方が存在するかもしれない。そのことを自覚することが、勝てる若手になるための第一歩だと思います。「チャットGPTを使って勝ちました!」なんていう勝利の報告が聞ける日も、案外近いかもしれません。

いかがでしたでしょうか?

まだまだ他にもお伝えしたいことはたくさんあるのですが、ひとまず連載は終了です。ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。このコラムと、拙著『競合プレゼンの教科書 勝つ環境を整えるメソッド100』が、少しでも読者の皆様の勝率UPに貢献できたら、こんなに嬉しいことはありません。

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若手は競合プレゼンで成長する!

広告業界やコンサルティング、ITなどのビジネス現場で行われている「競合プレゼン」「コンペ」「ピッチ」に勝ち抜く100のメソッドを体系立ててまとめた一冊です。ライバルに勝つためのポイントについて、提案の中身やプレゼンテーション技術ではなく、勝つ「環境を整える」点に着目。競合プレゼンが始まる前の「兆し」から始まり、オリエン、キックオフミーティング、ストーリーづくり、軌道修正、プレゼン当日、事後までのフェーズごとに、行うべきこと、注意すべきことを丁寧に解説しています。

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