書き手は、最初と最後の一文にすべてをかけよ

発売中の『編集会議』の巻頭特集では、メディアの戦略について特集。それらを通じて見えてきたのは「“良いコンテンツ”だけでは売れない」と同時に、「“良いコンテンツ”でなければ売れない」ということ。では“良い原稿(コンテンツ)”とは何か。ノンフィクションをテーマに、ジャーナリストの木村元彦氏が“良い原稿”を書くための考え方や技法を解説する。


<編集者は原稿をどう磨く? 「編集」編はこちら>
「原稿」は編集者の手を介することで「記事」になる

原稿は「論」ではなく「ファクト」で語れ

原稿を書く上で何よりも大事なのは、「どう書くか」ということです。一人の人物を対象に同じ話を聞いても、「どう書くか」によって原稿は十人十色になります。イチロー選手がメジャー通算3000本安打を達成したときに、イチロー選手について書くとしましょう。ただ背景のデータをなぞっただけのWikipedia(ウィキペディア)の丸写しでは意味がない。書き手には、それを「どう書くか」こそが問われているんです。自分にしか書けない、自分だからこそ書けること、書き手の個性やオリジナリティを出すというのは、「何を書くか」ではなく「どう書くか」にかかっています。

「どう書くか」においては、取材したなかでどのファクトをひっぱってくるのか、つまり「何をどう書くか」ということも重要です。インタビュー受け慣れしている取材対象の場合は、話すことが定番化されていることも少なくない。それをそのまま書くのでは、他と似たような原稿になってしまいます。もちろん取材で何を聞き出すのかも重要ですが、取材で得た情報と周辺取材を含め、どのファクトを使うのか、そしてどのように書くかで、書き手としての力量が測られます。

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