前回、前々回のコラムでは、ニュースキュレーションアプリが伸びており、資金や人材が集まっている状況について紹介した。そんな中、先週またもや増資が発表された。ニュースキュレーションアプリの中では異彩を放つNewsPicks(ニューズピックス)を運営する、株式会社ユーザベースによるものだ。
リリースによると、ユーザベースは8月29日までに、第三者割当増資により総額4.7億円を調達した。引受先は伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、YJキャピタル、講談社、グロービス・キャピタル・パートナーズ、SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタル、新生銀行、GMO Venture Partners、マネックスベンチャーズと多岐にわたる。
ベンチャーキャピタル(VC)だけでなく事業会社系が多いことも特徴。講談社が直接出資しているほか、ヤフーやマネックス、金融系もVC経由ではあるが出資をしている。これによりユーザベースの資本金は2.8億から7.5億円へと増えた。
その額や引受先から考えると、先に増資を実施しているグノシーやグライダー(Antenna)、スマートニュースとは違い、会員増加のための広告投資というよりは事業内容拡大と提携関係強化のための増資と見て取れる。
しかも、今回のユーザベースの増資にも応じているグロービスベンチャーは先日のスマートニュースの増資にも応じている。
ライバル社に表立って同じVCが投資することはないというのが常識だが、このような現象が起こるのもNewsPicksが他のニュースキュレーションアプリとは別の方向性によるビジネスモデルを目指しているからだろう。
筆者は6月に行われたニュースサミットでキュレーションアプリをテーマにしたセッションのモデレーターを務めてからユーザベースに興味を持ち、共同代表の1人である梅田優祐氏に事業構想大学院大学での筆者が担当する科目“ビジネスモデル研究”にてゲスト講師を務めていただいた。
その時の話は予想を上回る内容と反響だったことから、今回はその時の内容、つまり会社の成り立ちやビジネスモデルに焦点を当ててみたい。まずはユーザベースの成り立ちを振り返ってみよう。
ユーザベースの成り立ち:世界一の経済メディアを作る
ユーザベースの代表である梅田氏は外資系の金融機関に勤務していた当時、日頃より経済メディアのサービスを利用して企業や業界のレポートを毎晩遅くまで作成していた。
その中で梅田氏は一つの大きな不満を抱えていた。「経済メディアのサービスが使いにくくて仕方がない」ということである。
投資判断に必要な情報をまとめるためには、非常に煩雑な経済データベースの使い方を覚えたうえで、個別にリサーチした内容を整理し、レポートとして提出する必要があった。
梅田氏が当時経験したその苦労をなくすために、簡単に操作できるインターフェイスのデータベースを作れないかということから生まれたのがユーザベースという会社であり、またSPEEDA(スピーダ)という事業である。
梅田氏は志を同じくする新野良介氏と新垣祐介氏と3人で起業した。当初の資本金は3000万円、東京・品川の12畳のマンションで寝食を共にするベンチャー生活に飛び込んだ。
所帯は小さくともユーザベースをスタートした3人の夢は大きく“世界一の経済メディアを作る”ことを目指して日夜開発にいそしんだという。
しかし、実態は開発をアウトソースする資金もなく、かと言って創業メンバーにプログラムができる人材もいなかったので途方に暮れていた時にフリーの優秀なエンジニアが手伝ってくれたり、あと数カ月で資金ショートするというところで製品がリリース出来たりと、色々な幸運な事象が重なり主力製品のSPEEDAがリリースされたのである。
一言でいうと優秀な若手:SPEEDA
現在のユーザベース社の主力事業のSPEEDAは「企業・産業分析に必要な情報が網羅的・体系的に整理された情報プラットフォーム」と同社が謳っているように、シンプルなインターフェースで企業や産業を分析し、投資などのビジネス判断に使えるデータベースである。
国内全上場企業・非上場企業を約4万5000社をカバーするのみならず、海外180カ国超の25万社の財務データ、関係会社、役員、株主、業績予想などのデータを収録している。
さらに専属アナリストによるオリジナルの550業界の分析レポートや各種市場データ、業界ニュースを提供している。これらは多くの提携データベースからの情報を集約しているから提供できるのであり、すべての内容を簡単にエクセルなどにも書き出せるプラグイン機能も用意されている。
パンフレットによるとこれらは企業に月額39万円からで企業に提供されている。現在ユーザベース社は110人の社員を抱えて売り上げを順調に伸ばしているが、その大半がSPEEDA事業によるものである。
NewsPicks事業への挑戦、徹底的な専門化と差別化戦略
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