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コラム

マーケティングを“別名保存”する

勘と経験と度胸による広告クリエイティブのチェックは、良いのか悪いのか

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【前回】「我々は、デジタルメディアで「邪魔」されたがっている」はこちら

制作物の「コンテンツ」と「コンテクスト」を見よ

画像提供:shutterstock
部下:新商品のトライアル購入キャンペーンのサイトデザイン、確認をお願いします。

上司:うーん、なんかごちゃごちゃしてない?ぱっと見、何が言いたいかわからないわ。ウチのクリエイティブは、いつでも「シンプルでクリーン」なわけでしょ。それに消費者はそもそも広告なんて見たくないんだからさ、もっと集中力のない状態で見るじゃない?これじゃ、絶対何が言いたいかわからないと思うよ。

部下:言いたいこととしては、キャンペーンに参加してください、ということなのですが、ぱっと見「キャンペーンに参加してください」っていう私たちの言いたいことがわかっても、参加してくれませんよね。まず商品の魅力を理解してもらって、このキャンペーンがいかに「おトク」であるかを理解してもらって、そのうえでキャンペーンに申し込んでください、ということを伝える必要があると思って。

上司:その中では何が一番重要なの?

部下:やっぱり商品の魅力ですかね。まずそれを理解してもらわないことには、いかにキャンペーンの内容が魅力的でも、キャンペーンに参加してもらえないと思うので。

上司:じゃあそれを“What to say”にして、ぱっと見でもすぐにわかるようにしようよ。「シンプル&クリーン」にね。あと、このヒーローイメージ、背景が目立ち過ぎているから、もっと商品にフォーカスしたものに変えておいて。

マネージャーとメンバーの役割分担で、どこまでを誰が決めるか、というのは、会社によってそれぞれだと思います。しかし、バナーやランディングページなど、一制作物の確認作業に関しては、クオリティーやメッセージ、トンマナなどのブランドとしての一貫性を担保するために、マネージャーレベルが最終確認と承認をする、ということが多いのではないでしょうか。

この確認作業には、「コンテンツ」の確認と「コンテクスト(文脈)」の確認があると考えています。特にコンテクストは、デジタル時代になってカスタマージャーニーが複雑化し、より重要性が高くなっているものです。それゆえ、キャリアの長いマーケターの方でも、逆に見落としがちなところだったりしないでしょうか。上司ロールの方でも部下ロールの方でも、冒頭の会話に違和感を抱かない場合、もしかしたら制作物の確認にコンテクスト視点が欠けているのかもしれません。

特にデジタルにおいては、コンテンツ視点でのクオリティー管理のほか、コンテクスト視点でのクオリティー管理も必要と考えるわけですが、一言で言うと、それはその各制作物のJTBD(Jobs to be Done)、果たすべきジョブを明確にすることと言えます。

複雑なカスタマージャーニーのなかで、その場面においてバナーやLPが具体的に何を達成しなくてはならないのかを明確にする。こう言うと当たり前な感じがしますが、これを制作の場面で徹底するには、KKD(勘と経験と度胸)に頼るのは難しく、フレームワークが必要です。ある意味で感覚的かつ、感性で見たほうがよい場合もあるコンテンツのクオリティー管理とは異なって、より変数が多く複雑なためです。

今回は、そんな制作物のコンテクスト管理に関して、私が開発し、普段使用しているフレームワーク、「コンテクストフリップボード」をご紹介します。

これはチェックシートというよりは、ブリーフィングシートに近いもので、制作に先立ち以下の5つの点を明確にすることから始めます。上がってきた制作物を、同じポイントを使ってチェックします。

  1. ターゲット
  2. 複数の場合はその優先順位
  3. 各ターゲットに対するその制作物のJTBD(果たすべきジョブを明確にすること)
  4. JTBD(果たすべきジョブを明確にすること)をその制作物上で具体化したCTA(Call to Action:喚起すべき行動)
  5. CTAを数値化したKGI (Key Goal Indicator:重要目標達成指標)

具体的には、これらをエクセルのシートに入力していきます。表頭(横軸)が上記の5項目、表側(縦軸)がターゲットになり、ターゲットが一グループだけなら表側は一行だけになります。

バナー、キャンペーンページ、商品ページ、など、通常一キャンペーンには複数のステップがある場合がほとんどだと思いますが、ステップごとにシートを分け、ジャーニー全体を紙芝居のようにペラペラとめくって確認できるようにしておきます。ステップ4と5は通常次のステップの入り口になるため、その連結、つまりコンテクストに矛盾がないか、すべての制作物向けのフリップボードが完成した際に確認します。

 

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