背景にあるのは、全体図描けるポジションの不在
広告業界の新しい職能としての「コンテクスト・プランナー」という概念を前回の文章で提示した。これについてもう少し書いておきたい。
今、広告業界内を見渡してみると、「コミュニケーション・プランナー」、「コミュニケーション・デザイナー」という肩書きが存在する。広告会社ごとに多少違うが、前者はメディアプランニング系のセクション、後者はクリエーティブ系のセクションに設置されていることが多いようだ。一方、PR業界内でも「コミュニケーション・プランナー」と呼ばれる人たちが存在し、いわゆる戦略PRのプランナーをそう指すこともでてきている。
さて、「コンテクスト・プランナー」という職能を業界内の機能・ポジションとしてどのように考えるかだが、私はこれを以前業界内を席巻した「アカウント・プランナー」をより拡張した職能に近い、と最近考えるようになってきた。
「アカウント・プランナー」は[消費者の代弁者]として、インサイトを発見し、そしてクリエーティブブリーフをクリエーティブチームに提示する人、である。主にCMやグラフィックのアウトプットをより消費者に刺さるよう創り上げるため、制作の前段階に大きな役割を果たす。消費者にとって伝わりやすいメッセージの方向性を導き出し、クリエーティブスタッフにオリエンテーションする職能だ。ただ「アカウント・プランナー」は従来型のメディアプランニングの枠組みの中の存在であり、新しいメディアやPR的な対応という面ではこのポジションではなかなか難しい。
広告会社の中で現在もっとも困っているのは誰か。それはどうも営業の人々であるらしい。自分自身も営業がキャリアのスタートであったため、理解できるのだが、広告業界の営業職のもっとも重要な仕事は「スタッフィング」にある。しかし、営業の諸先輩・元同僚・後輩たちに話を聞くと「どうスタッフィングすればいいのかわからなくなってきている」という言葉がでてくる。
広告主サイドのオファー(要望)が、あらゆるメディアに渡るだけでなく、PRやセールスプロモーションなどのあらゆる戦術にまで拡がり、それらの全体図を描く必要性が出てきている。しかし、実態は営業がPR会社に直接話をしたり、またはクリエーティブ方面では相変わらず、ネットはネット、マスはマス、な風潮が続いていて、広告主の商品のマーケティングコミュニケーションについて全体図を描けるポジションが「いない」。「コンテクスト・プランナー」はそのギャップに機能する存在、と考えている。(次ページに続く)
「高広伯彦の“メディアと広告”概論」バックナンバー
- アメリカで注目を集めている“Inbound marketing(インバウンドマーケティング)”とは何か(最終回)(2012/7/06)
- アメリカで注目を集めている“Inbound marketing(インバウンドマーケティング)”とは何か(4)(2012/7/02)
- アメリカで注目を集めている“Inbound marketing(インバウンドマーケティング)”とは何か(3)(2012/6/26)
- アメリカで注目を集めている“Inbound marketing(インバウンドマーケティング)”とは何か(2)(2012/6/22)
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- ソーシャルメディアの時代なので、クチコミマーケティングを再考しよう:6(2011/9/26)
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