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「半沢直樹」のヒットの背景を考えてみた(2)

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半沢の「睨み」が高視聴率を呼んだ!?

また、本ドラマはキャスティングも見事であり、違和感なくストーリーが入ってくることも見逃せないだろう。半沢直樹、花夫妻は共に芸能人同士の新婚のカップルである堺 雅人(2013/4入籍)と上戸 彩(2012/9 入籍)をキャスティングしており、幸せオーラを感じ取れる。先述した宇梶剛士と藤沢未樹を演じる壇蜜も絶妙に役にマッチしており話題性も高い。



(c)TBS

しかし、特筆すべきは重要な脇を固める和のテイストの配役であろう。特に重要な高い位の役設定には歌舞伎界の血を引く役者を配しているところが見逃せないのである。大阪国税局統括官の黒崎駿一は歌舞伎役者である片岡愛之助が名演をしており、東京中央銀行常務である大和田暁を演じる香川照之も歌舞伎役者である。さらにその上司である東京中央銀行頭取の中野渡謙を演じる北大路欣也の父親は歌舞伎役者である市川右太衛門である。ここまで歌舞伎役者が出てくるのは偶然ではないと筆者は考えている。



(c)TBS

ここで前回のコラムのヒントであるが、筆者は半沢の表情やセリフは実は歌舞伎の「にらみ(睨み、見得)」に似ているのではないかと考えている。


この絵は筆者の要望に応える形で、編集部が半沢直樹の表情と歌舞伎の睨みをイラスト化してもらったものであるが、似ていないだろうか? 歌舞伎では役者が感情の高まりなどを表現するために見得を切るのを「にらみ」と言うそうであり、しばしば使われる。

実は成田屋だけが襲名の口上などの祝儀の席で、この「にらみ」を特別に披露することを許されているそうで2013年正月には新春浅草歌舞伎において、市川海老蔵の睨みを見れば、無病息災とのアナウンスを行ったのである。半沢直樹の睨みも高視聴率をもたらすといいうご利益があったのではと筆者は考えているが、読者の皆様は如何であろう。

実は、このような考察に至ったのには筆者が前職でかつて行ったキャンペーンとの類似性が背景にある。それは、2007年6月より実施したコカ・コーラ ゼロの「ゼロ侍」のキャンペーンである。当時コカ・コーラ ゼロは働く男性をターゲットにゼロカロリーの炭酸という切り口で「日本の男よ、ためらうな」という合言葉でスーツ姿に刀でコカ・コーラ ゼロをちょんまげに見立てた「ゼロ侍」というキャラクターを設定したのである。

日本での発売当時(2007年)のコカ・コーラ ゼロのキービジュアル

ゼロ侍は会社員ではあるものの自分の意見を正々堂々と上司にぶつけてゆき、ためらわずに自分の信じる道を歩んでゆくという設定である。このキャンペーンの成果だけではないだろうが、コカ・コーラ ゼロの日本でのローンチは非常にうまく行き、世界でも最高水準の普及率の達成と“ゼロ”という新しいカテゴリーの成立に成功したのであった。

次回はヒットの要因(3)としてソーシャル性その他の要素を分析したいと考えている。