ウェストロサンゼルスの、もり寿司にて。
僕はきのう、ウェストロサンゼルス、ピコ通り沿いのもり寿司で、にぎりをつまみながらコラムの閉じ方を考えていた。実は、予定していたわけでも予約していたわけでもない。以前に教えてもらったこの店に行くことに1時間前に決めた。なぜかというと、ここのところずっと元気がいまいち出なくて、心も沈んで晴れなかったからなのだ。がんばって、肉を食べたりしているのに…。コラムの最終回もプレッシャーばかりでまったく書く気が起きなかった。どうしたものかと考えていたところ、昔読んだ『美味しんぼ』のある話を思い出した。
それは、こんな話。来日したギリシャ人のオペラ歌手が、歌えなくなってしまった。いろんな料理で元気を出してもらおうとするのだが、彼女は落ち込むばかり。そこで山岡が、彼女の故郷の、タコに匂いのきついオリーブオイルをかけた郷土料理を出すと、彼女以外のメンバーには食べられないものだったが、彼女だけがよろこんで食べ、元気になって歌えるようになった。彼女はホーム・シックだったのだ。山岡は、黒人のジャズ・ミュージシャンが演奏旅行をするときに、彼らがいつも「ソウル・フード」と呼ぶ内蔵の煮込みを食べていることをヒントにした、という話(だったと思う)。
僕にとってもり寿司のすしが、まさにソウル・フードだったのだ。英語でグローバルな広告に挑戦し、新しいテクノロジーとの融合や、社会を変える大きなアイデアを。それがこれからのスタンダードさ、と思っていた自分も、やはり無理をしていたわけである。ロスではスシはスーパーで買えるくらいみんな食べているものだけれど、ソウル・フードと呼べるスシとなると…。自分の中のローカルの大切さが、身にしみて、胃にしみて、わかった夜だった。きょうはめちゃくちゃ快調である。
今、半年弱12回に渡る連載を書かせてもらえるチャンスを与えていただいたことに、心の底から感謝の思いが湧き上がっている。読んでくれるあなたがいると思うと、毎回がんばれるものなのだと初めて知った。そして毎日様々に経験することを、その都度文章にしてまとめる作業が、どれだけ僕のためになったかわからない。読んでくれたあなたに。本当にありがとう。
あと7カ月、がんばります。
「原田朋のCHIAT\DAY滞在記 ~リー・クロウの下で365日~」バックナンバー
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