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コラム

いま、地域発のクリエイションが面白い!第2弾

デザインの力で加速させる、名古屋密着ブランドの魅力

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二つ目の事例は、名古屋を代表する漬物メーカー、大和屋守口漬総本家です。

看板商品の「守口漬」は粕漬という方法で作られる漬物でお酒の香りがするのが特徴。若年層にはこの香りを敬遠する人が多く、年配の方は好んでいると思われています。

同社から最初にご相談いただいたときは、「日本の食文化がひとつ消えてしまうのではないか」というくらいの強い危機を感じました。

オーダーはこの危機をパッケージ変更で乗り切りたいというものでしたが、初めは「無理です」とお返事しました。というのも、パッケージだけを変えても中身が変わらないと、パッケージ変更直後のたった一度しか売れません。

僕は、消費者は「デザイン」「名前」「味(内容)」「値段」のバランスを見て商品を購入していると感じています。パッケージを買うのが目的ではないので、肝心の「味」が消費者に合わないとリピート購入が見込めないのです。

提案する度に、味のリニューアルについてもお話しさせていただきましたが、老舗なので変更はなかなか容易ではありません。

そこで目を付けたのが、「守口漬は粕を取り除いてから切るというのが手間」という消費者の意見を元に開発されたのが「守口漬生ふりかけ」でした。個包装を開けてご飯にかけるだけ。ご飯と合わせることで、偶然にも味がマイルドになって食べやすくなりました。

この商品は、漬物のターゲットを広げるチャンスだと思い、パッケージデザインをお手伝いすることにしました。同社社内からは「これはうちのデザインじゃない」という意見も出ましたが、次の世代にも愛されるブランドであり続けるためにコミュニケーションのトーンを変えないといけないタイミングだということは確信していたので、賛否両論あっていいと思いました。

新商品はお店に出してすぐ反応があり、売上にも貢献することができました。

大和屋守口漬総本家「守口漬生ふりかけ」

広告やパッケージを主軸としながらも、近年では仕事の領域が徐々に広がりつつあります。

少し前ですが、2011年には初めて、書籍デザインを手がけました。『名古屋の居酒屋』という地元で有名なフリーライター・大竹敏之さんの本です。

帯がのれんのようになっていたり、のれんをめくると店のオヤジがいたりと、仕掛け満載です。カバーは凸版印刷で印刷しているので、1冊ずつ刷り上がりが異なります。電子書籍が一般的になり、書店が押され気味なのが気になっていたので紙の本でないとできないことを盛り込みました。

出版社の社長から「装丁で本が売れるのを初めて感じた」と言ってもらえてうれしかったです。

書籍のデザインもパッケージデザインも店頭でたくさんの競合の中から手に取ってもらうという点は同じだと思います。ただパッケージよりも「デザインが商品の一部」という要素が強いと感じました。

『名古屋の居酒屋』(大竹敏之著)。のれんをめくると店のオヤジがいる。

次ページ 「名古屋から全国、そして世界へ、」に続く