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コラム

ビデオコミュニケーションの21世紀〜テレビとネットは交錯せよ!〜

VODは入り口にたどり着いたにすぎない。dビデオのリニューアルから未来は見えるか?

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さて、こんな風に理想のVODを求めてきた筆者から見て、日本のVODの現状を総括すると、以下のようなポイントがあります。


1:テレビで使えるVODサービスがまだまだ
2:「何を見たらいいか」を教えてくれる機能が必要

こうした現状認識のもと、dビデオが発表した内容を見てみましょう。彼らが今回のリニューアルで挙げた3つのポイントはこれです。

4月22日に名称をdビデオからdTVに変更し、リニューアルを実現します。ドコモのサービスとしてはじまったので、スマホで使うイメージが強いのですが、これまでもAppleTVのAirPlayを利用すればテレビでの視聴もできました。でも専用の端末であるdTVターミナルを発売し、テレビの使いやすさを追求しようとしている。これは課題1へのアンサーだと言えます。

そしてUI、つまり使いやすさの追求。先ほどの課題2に応える形です。これについては発表会のあと、このサービスを指揮しているエイベックス通信放送 取締役、村本理恵子氏に話をうかがいました。

意外に知られてないと思いますが、dビデオはNTTドコモとエイベックスの共同事業であり、サービスやコンテンツの中身はエイベックスが運営しています。村本氏もエイベックスグループの役員なのです。

さて、その村本氏の意外な経歴をご紹介します。時事通信社で世論調査の分析を業務とし、その後専修大学で教授となります。さらにIT業界のマネジメントに転身し、そこからエイベックスに参加しています。

お話を聞いてよくわかったのですが、人びとの声を分析しマーケティングに活かす仕事を一貫してやってこられたのです。VODユーザーの声を集めて作品のレコメンにつなげようと考えたのは、当然の流れだったのでしょう。

エイベックス通信放送 村本理恵子氏

「今回のリニューアルはサービスをはじめた頃からイメージしていたことです。何を見ればいいかわからなくなるユーザーに最適のコンテンツをレコメンデーションすることでさらに使いやすいサービスになると思います」と言う村本氏。具体的な開発は、一年半前から。やるなら最上のシステムにと、開発にはIBMに参加してもらったそうです。

各作品に何十種類ものタグをつけていきます。出演者や監督だけでなく「ワクワクで脇汗ドバッ」とか「強いぞ!女子」などなどあらかじめコンテンツを表現するワードを膨大に用意しておき、当てはまる言葉をタグとしてつけていくわけです。

一方、ユーザーの視聴傾向を分析し積み重ねています。この作品を選ぶなら、こっちもオススメしていいはず。おおまかにはそんな仕組みです。言葉で言うのは簡単ですが、実際にこれをシステムとして開発するのは並大抵ではないでしょう。

新しいUIでもうひとつ面白いのは、ザッピングUIと名づけられた仕組み。
「自分でも夜疲れて帰宅した時、なんとなくテレビをザッピングしてリラックスして番組を選びます。その感覚にできるだけ近いUIにしたかったのです。」
そこで、タテに並んだ番組画像をさわると次々に予告編が流れるようにした。違うと思ったらすぐ別の画像にふれるとまた次の予告編が動き出します。それにより、テレビのザッピングに近い感覚でコンテンツを選べるのです。

発表された3つ目のポイント、プレミアムコンテンツについては、すでにいろんな記事になっています。これも並々ならぬ力の入れよう。個人的には『ニューシネマパラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレがオリジナル作品をつくるのが楽しみです。

dビデオは、母体であるBeeTVがスタートした2009年から、オリジナルコンテンツを多様なクリエイターと製作してきています。筆者はその頃、映像制作会社に在籍しており、そこでもドラマを作っていました。テレビドラマ並みの制作費を用意した上に、再生数に応じたボーナスも出るルールです。“グッド・シェア”と呼ばれるこのシステムは、ぎりぎりの制作費で作っておしまいの映像制作業界にとって大きなモチベーションになります。エイベックスには自分たちもクリエイターであるという企業風土があり、当然の考え方なのだ、と村本氏は語ってくれました。

次ページ 「VOD市場としてようやくスタートする」へ続く