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コラム

コピーライター養成講座 講師・卒業生が語る ある若手広告人の日常

2年目コピーライターの苦悩。

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あおり合いは、慶早戦名物。

早慶戦の試合開始前は、お互いが相手をあおり合います。
もちろん、ネタは事前に打ち合わせ済み。
笑いのキレも、勝負なのです。

早慶戦では試合開始4時間前から応援合戦が繰り広げられます。早稲田と慶應義塾は、野球に限らず様々な分野で競い合うため、応援合戦では真面目なことからおふざけまで、多種多様なあおり合いが行われています。

「慶早戦は、弱いほうが勝つというジンクスがある。今年の早稲田は非常に恐ろしい存在だ!」と野球のことをネタにしたり。時の総理大臣が早慶の出身であれば、「慶應の〇〇総理はもうツーアウトまできている!」「いや、早稲田の△△元総理はとっくにチェンジしてるぞ!」とあおり合う。さらには両校の校風に絡めて「おい慶應、ベンツで神宮にくるな!」「おい早稲田、まだハンカチ持ってるの?」とあおったりすることも。

一番拡散されたポスター。
有名人でなくても、慶早戦の魅力のひとつであるチアを使うことは、
それにも勝る宣伝効果になると考えていました。

初めてきた人でもクスッと笑えるこのあおり合いは慶早戦だけの魅力です。そしてまだ世の中の人が知らない部分なのではないかと考え、ポスターとして押し出すことにしました。

ある先輩に「良いコピーライターは、時代を味方にする」と言われました。世の中にある空気を感じ取り、その時代だからこそ響く言葉を探し出して、ポンと世の中に投げてみる。すると、とんでもなく強い言葉ができるというのです。この考え方を早稲田と慶應義塾で考えてみると、2つの単語が見つかりました。「ハンカチ王子」と「ビリギャル」です。幸運にも、どちらも野球や順位に近い言葉であり、慶早戦との距離感もちょうどよかったのです。その2つの言葉を、悪口にならない表現に落とし込んだコピーが「ビリギャルって言葉がお似合いよ、慶應さん。」「ハンカチ以来パッとしないわね、早稲田さん。」でした。慶早戦を知っている人なら、「ああ、あれね!」と盛り上がり、知らない人が見たら、「なにこれ!面白い!」と感じてくれるかなと期待しました。

真似されることは、新しい証拠。

正直な話、学内ポスターを作っただけだったので、これほど多くの人の反響をいただけると思っていませんでした。一晩で3万RT、ネットの記事のいいね数も合計で数十万に伸びていました。貼ったポスターが盗まれたり、ポスターの前で記念撮影をしていたり、コピーを書いたTシャツで応援にきたファンがいたりと、テレビや新聞に露出してから、信じられない反響をいただきました。そして5月から今に至るまで、たくさんの企業や団体の方が慶早戦ポスターのオマージュを制作してくださいました。
今回のお互いが何かをあおり合っているという構図は、とても真似しやすいフレームだと思います。

学生スポーツを盛り上げようと、関西の学生がつくったポスターです。パロディを制作してよいかと、わざわざ電話をしてきれくれました。

「パクりはダメだ」というのが一般的ですので、様々な方々から「早慶戦のポスターを真似しているものがあるけれど、文句を言わなくていいのか」とご指摘をいただきます。たしかに、無断で使われることは気持ちよくないですし、許されないことだと思います。しかし、わたしは真似してもらうことで誰かが喜ぶのであれば、光栄だと思っています。真似してもらって、全国の学生スポーツや試合、お店や企業や地域の企画が少しでも盛り上がればいいなと。もちろん、悪意あるパクリは嫌ですが、慶早戦と同じく、相手にリスペクトのあるものであれば、大歓迎です。

そしてそれを見た人が、「これ、あのときの早慶戦のポスターみたいだね」と思ってくだされば、私も嬉しいです。

次ページ 「世の中の一体感を、つくっていきたい。」へ続く