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米国広告トレンドの勘どころ【後編】「フィンテック」から見えるエージェンシーの未来

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【ポイント5】オムニチャネルは、米国でも発展途上?
小売り業界復活の鍵となるか

日本の小売り業界でも注目度の高い「オムニチャネル」。この言葉は、米国の百貨店「Macy’s (メイシーズ)」が2011年に発表した、いわゆる「オムニチャネル宣言」がきっかけで広く知られるようになった。

オムニチャネルが語られる際には、ネットからリアルに送客する「O2O(オンライン・トゥー・オフライン)」の施策が不可欠という見方をされることも多いが、オムニチャネル先進国の米国でも、そこまでのレベルで実施されているケースは多くない。

実際、メイシーズでも、「BOPIS(Buy Online Pick up Instore:ネットで注文して、店頭で商品を受け取れるサービス)」の受け取りカウンターは、マンハッタン中心部にある旗艦店でも地下1階の片隅にひっそりと設けられており、戦略上の優先順位があまり高くない様子が見て取れる。

National Retail Foundation(全米小売業協会)発表の「米国百貨店ランキング」を見ると、メイシーズは全米1位(280億ドル)だが、アマゾン(740億ドル)と比較すると4割程度のサイズでしかない。

世界の小売り市場でネット通販勢が台頭する中、大手百貨店の生き残り策としてO2Oを含むオムニチャネルの実現は不可欠と言える。

しかし、メイシーズの売上は2012年を最後に頭打ちとなっており、既存店増収率は2011年頃をピークに伸び率が下降傾向にある(同社決算資料より)。

この既存店増収率は、実店舗の売上だけでなく、オンライン上での売上や、ライセンス供与しているサードパーティーからのフィーも含む「オムニチャネル」としての集計数字であり、同社がオムニチャネル戦略を、新規顧客獲得や顧客単価増に効果的につなげられていないことを意味している。

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「オムニチャネル」が世の中に広く知られるきっかけをつくったメイシーズ。

小売り業界にとって目下の課題である、ショールーミング問題を逆手にとった施策を展開している例として、LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン傘下の化粧品販売チェーン・Sephora(セフォラ)と、メンズウェアブランド「Bonobos(ボノボ)」が挙げられる。

前者は、店頭の商品に記載されたバーコードをスマートフォンで読み取り、レビューなどの詳細情報を閲覧した上で、そのままオンライン注文ができるアプリを提供。実際、若い女性客がアプリを利用している様子がよく見られた。後者は、そもそも、店舗に商品販売の機能を求めていない。店頭では気に入った服やスタイルを「決める」「感じる」ことが大事なのであって、服の代金を払い、重い荷物を持って帰ることはショッピングの本質ではないという発想だ。

店舗はショールームとしての機能に限定され、購入はすべてオンラインから。注文翌日には商品が配送される。小規模出店が可能となるほか、店舗スタッフは精算や在庫管理といった業務から解放され、接客などのサービスに専念できることが、同ブランドの差別化要素となっている。

榮枝氏は、「オムニチャネルをはじめ、米国であっても、まだ発展途上のマーケティング手法が少なくない。視察においては先入観を持たず、“リアル”なアメリカの姿を見聞きし、感じてもらいたい」と締めくくった。

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ホールフーズでは、クラウドソーシング食品宅配サービスのInstacartと提携したサービスを展開している。オンラインで注文した商品を、①自宅まで配達してもらう、②店頭の専用ロッカーから受け取る、の2パターンから選べる様子。