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コラム

脳のなかの金魚

才能ほど壊れやすいものはない。それはほとんどの場合修復されない。

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英語で、giftを引くと、たいていの辞書では、①「贈り物」のあと、②(天賦の)「才能」、とある。そう。才能はギフトなのである。神さまがたぶん無作為抽出によって与えたところの。ちょっと素敵な英語だ。贈り物には、みんなを楽しませ、幸福にする力がある。もし、それをどこかで発見できたら、損なうように振る舞ってはいけない。絶対にいけない。受け取ったギフトを踏んづけて痛めていいわけがない。

“Yello”“Fix You”などで、すでにメジャーなバンドになっていたコールドプレイ。4枚目のアルバム”Viva la Vida or Death and all friends”制作にあたって、ブライアン・イーノが、プロデュ―スに立った。彼はデヴュー当時から、ときどき音楽制作上のアドヴァイスのようなことをしていたらしい。イーノにしてみれば、確実にそこに存在する才能を何とかしたかったということだと思う。
デモを聴くたびに、よく言ったという。

「わるくないけど、きっと、もっとよくなるよ」

幸いなことに、もはや若い才能に嫉妬する年齢でもなくなった僕たち老人は、後輩たちにそう言い続けるのが仕事のひとつだ。おそらく。

確実にそこに存在している才能が、形になることなく消失してしまうこと。
当初の輝きを失い、やがて消えてしまうこと。
外部環境によって、損なわれてしまうこと。
理解される前に、折れてしまうこと。

これほど、見ていてせつないできごとがあるだろうか。
何も天才に限ったことではない。
1グラムほどのクリエーティビティであっても、同じことだ。

才能が壊れやすく貴重なものであること。それが属人的なものでありながら、実はみんなのものであること。無条件に敬意を払うべきものであること。
これらの感覚が共有されている社会とそうでない社会との差は、想像以上に大きいと思われる。


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古川裕也(ふるかわ・ゆうや)
電通 CDC局長 / エクゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター
クリエイター・オブ・ザ・イヤー、カンヌライオンズ40回、D&AD、OneShow、ニューヨークADC、アドフェスト・グランプリ、広告電通賞(テレビ、ベスト・キャンペーン賞)、ACCグランプリ、ギャラクシー賞グランプリ、メディア芸術祭など400以上の受賞がある。
カンヌライオンズ、D&AD、クリオなど国内外の審査員多数。2013年カンヌライオンズ チタニウム&インテグレーテッド部門、2014年同フィルム部門の審査員を務めた。2015年ACC(全日本CMフェスティバル)審査委員長。D&AD「President’s Lecture」、B Dash Camp など国内外の講演多数。アドタイ「脳のなかの金魚」等のコラム、作詞、番組脚本なども手掛ける。