コラム

四苦ハック人生 in Sanfrancisco

海外でフリーランス・アーティストとして生きるには。スズキユウリさんの仕事論。

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海外を拠点に、アーティストとしてキャリアを築く

川島:RCA 卒業後の活動について伺えますか?

ユウリ:RCAを卒業した後に大きいものから小さいものまで、いろいろな展覧会の誘いを受けるようになりました。お金は全然無かったんですが、そういうお誘いをなるべく受けて作品の展示に力を入れていました。そういう活動を2年ぐらい続けていました。

その後2010年に東京ワンダーサイト主催のイベントで、スウェーデンに3ヶ月の派遣で滞在しました。スウェーデンにTeenage Engineeringというちょっと変わった楽器やスピーカーをつくっている会社があるんですが、滞在期間中にそこの会社にメールをしたら、社長からすぐに「遊びにおいで」って返事をもらえたんですね。なので嬉しくて遊びに行ったらそこで「うちで働かないか」ってお誘いをもらいました。それで1年ぐらいTeenage Engineeringで働いていました。

そのあと、現在Google ATAPに在籍されてるイワン・ポピレフさんの図らいで、アメリカのピッツバーグにあるディズニー・リサーチで働ける機会を得ました。僕は子供の頃からディズニーランドがものすごい好きで、ディズニーランドを作る「ディズニー・イマジニアリング」で働くことが小さい頃からの夢だったんですね。だから飛びついて参加しました。そこで半年ほどそこで働き、「Ishin-Den-Shin」を制作しました。このプロジェクトは、マイクを持っている人が相手の耳に直接指を触れることで、相手に音を伝達する。するとまるで指先から声が聞こえるような体験ができるというプロジェクトです。技術的には録音した音声を信号データに変換して、その信号を鼓膜に伝えています。

どうやって思い付いたかというと、一緒の研究チームにいたOliver Bauがある時にラップトップを触りながら、もう片方の手の指を耳に突っ込むとその音が聞こえることを発見しました。要は昔のコンピューターはきちんとアースを取れていなかったので、触るとちょっとビリビリしていたんですね。その帯電しているところをうまく耳に当てると音が伝わる。そういった個人的な体験からこの作品のヒントを得ました。この作品は後にメディアアート展のアルスエレクトロニカで受賞をすることもできました。また展示を通じてミュージシャンのOK GOのボーカルのダミアンと知り合い、そこからコラボレーションの機会も生まれました。

RCAで行われたワークショップ。ゲストにOK GOのボーカル、ダミアンを招待。

その後ディズニーでの仕事を終えて、またロンドンに帰ってきました。スウェーデンでのTeenage Engineeringで経験を生かして、自分でも電子機器をつくろうと思い立ちました。そしてOtotoという電子工作キットのアイデアの出資者をKickstarterを通じて募りました。Ototoとは身の回りにあるものを何でも楽器にするというアイデアですが、有難いことにかなりの出資者が集まり無事にリリースすることが出来ました。

電子工作キット「Ototo」電気を通すものなら何でも楽器に変えることができる作品。

川島:ユウリさんはロンドンをベースに海外で、しかもフリーのアーティスト・コンサルタントとして働かれています。僕自身もユウリさんの名前を初めて耳にしたのは、僕が働く部署での社内メーリングリストでした。「こんな面白いアーティストがいるよ!」って。ユウリさんのような立場で働かれている日本人は少なく、とてもユニークだと思います。普段どのような案件を扱われていますか?

ユウリ:割合で言うと、去年は日本とアメリカ、ヨーロッパからの案件を、同じぐらいの割合で仕事を受けました。やはり日本人なので日本とのプロジェクトはなるべく受けたいと思っています。オリンピックもいろいろな問題にはなっているけれど、やはり人生で一度あるかないかのお祭りですし、何かの形で関われたらいいなと思っています。でもベース自体はもうしばらく海外に身を置いていきたいと思っています。日本が嫌だからとかそういうことではなくて、今はこっちで暮らすだけの環境を整えることがやっと出来た。それにイギリス人でも日本人でも基本的に同じ人間なので、日本でやろうとイギリスでやろうとそこまで変わらないかなって思っています。

川島:僕も海外をベースにしていますが、何にも所属していない立ち位置が、それはそれで意外に心地よいのかなって思っています。アメリカに住んでいるけど、アメリカの中では自分は「ガイジン」なわけで、そこでローカルにどっぷりとつかっているわけではない。かといって日本から見たら、やはり「海外にいる人」みたいな存在で、日本のコミュニティーには深くは属していない。悪く言えば地に足がついてない存在なのかもしれないけど、その自由さというかフラフラ感は、それはそれで悪くないのかなって。そういう立ち位置だからこそ、見えてくるものもあるのかもしれないって。

ユウリ:それは僕もあって、社会に属していない感がずっとありました。最近でこそ税金を払う時に、ああ僕も社会に属していたんだ、なんて思い出しますが(笑)。

川島:でも作家活動や仕事をしていると、自分ではそこまで意識してなくても、おのずとアウトプットは日本っぽくなってくる。僕自身もよく指摘されるし、ユウリさんの作品を見ていても、やはりどこか日本の面影のようなものが垣間見えると思います。その度にやはり僕は日本人なんだって考えさせられる。でもそれは何故なんだろうって、僕はある時期に「陰翳礼讃」や「いきの構造」「武士道」なんかを読み漁ったりしました。

ユウリ:僕も読みました。僕は茶道の勉強をしたり、京都で桂離宮の庭園に行ったりしました。桂離宮の庭園を歩いていると、幕の内弁当って日本人の構造の縮図なんじゃないかって気がつきました。小さくてもいいから好きなものを目一杯詰め込んじゃう。海外のパックツアーとかも同じですよね。7日間で7カ国を巡っちゃうみたいな。栄久庵 憲司氏の幕の内弁当の美学とは若干ポイントが違うとは思いますが、日本人ってそういうのが好きなんじゃないかと。ヨーロッパの人をみてたらそんな旅行はなかなかしませんよね。ひとつのものをただゆっくり楽しむのが彼らのやり方です。でも結局気づいたのは、僕も幕の内弁当が好きなんです。例えば小さいものがたくさんあるのとか大好きなんですね。「The Physical Value of Sound」というシリーズの作品でもそれを意識して作りました。

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