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コラム

電通デザイントーク中継シリーズ

映画監督と広告人による、超アナログ的な制作の秘密「ふたりは なかよし」(前編)

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CMディレクターはサッカーでいうフォワード

田島:大八さんは、仕事を断ったことってありますか?

吉田:「断わる」という感じではないですね。打ち合わせをする前に企画コンテを見せてもらって、「多分こんな演出コンテを描きそうです、そういうふうに変えられるかどうか聞いてみてください」と言うことはあります。それは多分通らないだろうなと思うような演出のときです。

田島:そこは大八さんの優しさですね。演出コンテのときに急に「えー!?」というものを持ってこられても困りますから。CMの現場でプロデューサーに求めることは?

吉田:サッカーで考えると、CMディレクターはフォワードだと思うんです。クリエーティブディレクターやプランナーが監督で、自分が起用されるかどうか、プレーするタイミングも含めて監督によって決まります。自分は呼ばれたところで試合をするという感覚ですね。

そういう意味では、監督のことを尊敬するけど、自分とは合わなかったんだなと、試合が終わって思うことはあったかもしれません。それはしょうがないことですよね。フォワードにもいろんなタイプの人がいますし、監督にも好みがあるでしょうから。勝ち続けていてすごいなと思う監督でも、あの戦術に俺は合わないだろうなとか、そういうことはあります。

田島:チームマネージメントはどうですか。カメラマンや美術さんなど、チームを決める時の決めごとはありますか。

吉田:決めごとはありませんけど、撮影に関わるスタッフを決めるときは、撮影現場を想像して、どういう人にお願いするのがいいかなと考えます。クライアントがどういうところで、タレントは誰でとか、クリエーティブスタッフは指示がきついタイプなのか、放任タイプなのかとか、トゲトゲしい現場になりそうだとか、いろいろありますよね。1週間ロケに行くのと、スタジオで2時間かけてつくるのとでも全然違う。2時間でつくるときにスロースターターな人は呼べないなとか、撮影現場や仕上げ作業のときにストレスを感じなくていいように、そういうことを想像しながら考えます。

田島:「この演出コンテだからこの絵だ!」ということからスタッフィングすると思ったんですけど、そうではないんですね。

吉田:もちろん、それもあります。こういう絵で撮りたいというイメージが自分の中にあれば、そういう撮影が得意そうな人に頼むとか、あるいはそうでない人のときでも、自分がやりたいことを丁寧に説明する時間が取れればいいわけです。

田島:ありがとうございます。次に、映画の話を聞きたいのですが…。

(続きは後編)

電通報でも記事を掲載中


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■吉田大八さんのプロフィール

1963年生まれ、鹿児島出身。CMディレクターとして国内外の広告賞を受賞する。2007年『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』で長編映画監督デビュー。第60回カンヌ国際映画祭の批評家週間部門に招待され話題となる。その後の監督作として『クヒオ大佐』(09年)、『パーマネント野ばら』(10年)。『桐島、部活やめるってよ』(12年)で第36回日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監督賞受賞。『紙の月』(14年)で第38回日本アカデミー優秀監督賞受賞。最新作『美しい星』を2017年公開に向け製作中。

 

■田島恵司さんのプロフィール

1968年生まれ。グループ・クリエーティブディレクター。20年前にマツモトキヨシのCMシリーズで吉田大八さんと初タッグを組み話題となる。その後、桃の天然水シリーズや白元、三菱地所などでもCMを共作。最近はユニクロなど数多くの作品のクリエーティブディレクションを手掛けている。