コラム

関西で戦う。クリエイターの流儀

滋賀で生まれたフィギュアが、世界を驚かせる

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【前回コラム】「関西は、クリエイティブをビジネスにできる可能性でいっぱい」はこちら

関西でかたちラボという屋号でコピーライターをしている田中です。ぼくはフィギュアがとても好きです。海洋堂やメディコムトイのフィギュアは大好物!しかしいつも思うのですが、これは一体誰が買うのだろう?って。フィギュア市場自体、実はそんなに大きくなくて縮小傾向にあると言われています。ただアジア全体では、アーティストが手がけるソフビ(ソフトビニール製の人形)はとても人気です。今回は、そんな「フィギュア」で世界と勝負している方のお話です。

INSTINCTOY 大久保さんの場合

「関西で戦う。クリエイターの流儀」5回目に登場していただくのは、滋賀を拠点に活動しているINSTINCTOYの大久保さん。大久保さんが自分でデザインしたフィギュアを会社のメンバーや世界にいるパートナーと一緒に、国内はもちろん世界へ向けても幅広く展開しています。

大久保博人(INSTINCTOY)

2005年「INSTINCTOY」を設立。2008年にはオリジナルソフビフィギュア製作と販売。その後、会社・事業規模の拡大、店舗経営、自社スタジオ設立。そして毎年開催される「デザイナーズ・トイ・アワード」で2017年に「TOY OF THE YEAR」を受賞し、フィギュアデザイナーとして世界の頂点に。

 

TOY OF THE YEARを受賞した「King Korpse」のシリーズと「毒蛾怪獣」(手前)

現在、制作するフィギュアも世界から評価されビジネスとしても確実にステップアップしています。大久保さんが滋賀で自分がやりたいことや自分が欲しいものを作ることへの可能性についてお聞きしました。

自分が欲しいものは、世界が欲しいもの

—そもそも、なぜINSTINCTOYを立ち上げ、フィギュアを製作しようと思ったのですか?

大久保:幼少期から絵を学び、大学受験は東京藝大を目指し3浪しました。浪人中、受験のことはもちろんですが、将来について人生で一番悩み考えた時間でもあったのです。そんな中で、例え東京藝大に合格しても、将来性があるのかどうかをものすごく考えました。いろいろな意味で日本がアーティストを生み出しにくいな、と。そんな時に出会ったのがメディコムトイから発売された「ベアブリック」。真っ白なブロック型でクマの形をした「キャンパス」をさまざまなアーティストがコラボしています。オリジナルデザインの模様やペイントだけで魅力を変化させることができるという点に無限の可能性を感じ、アート系のフィギュアに魅了されました。ベアブリックをきっかけに、フィギュアに没頭し、おしゃれなフィギュアを中心に収集。その中でも、最も魅了されたのがソフビでした。そのような経緯で、自分の個性や独自のデザインを自由に形にできるのがソフビだと確信。後にオリジナル作品を制作するソフビメーカーを立ち上げるまでに至りました。

—第1弾の製作から現在に至るまで、多くの製品がお客様に喜ばれ、世界でも高い評価を得たのですが、その理由は何だと思いますか?

大久保:大きくは、本当に自分が欲しいものを作っているからだと思います。そのため、常に市場調査は常に「自分の中」に存在します。僕が欲しいものは、他のお客さんも欲しいと思っているはず。自分自身がソフビ好きのコレクターだからこそ、その自信はありますね。とはいえ、考える時は完全にフィクションではなくある程度の具体性が必要です。なので、いつも僕がする「自分市場調査」の方法がありまして。それが、「もし宝くじに当たったら何を買うか」という発想法です。

—宝くじの使い道をどうするのか、という感じですか?

大久保:投資に該当するような大きな買い物ではなく、究極自分の欲しい物を探すんです。例えば、高級腕時計が欲しいとなった時、それを徹底的に調べます。時計そのものもそうですが、時計を置いている店舗やブランドのストーリー、その時計を求める人の趣向性や生活シーン、価値観なども。価格などの金銭的な事情を完全に無視することで、物欲の本質が見えてくる様な気がします。もしフィギュアを購入するとしても、どのようなデザインを自分自身が求めているのか、どのような欲求を満たしたいのか、欲しいと思える作品に求める魅力は何なのか。これらのことを徹底的に分析することができるので、大切な「自分市場調査」だと感じております。

—面白い市場調査ですね。

大久保:骨董品や絵画を芸術品として楽しむのと同じく、今ではソフビフィギィアを芸術品として楽しむ市場が世界中に存在しています。だれもが気軽にアートとして楽しめるソフビフィギュアには無限の可能性があると確信しています。

INSTINCTOYのスタジオにて、自社製品のコレクションと大久保さん

次ページ 「これからは地方で戦う方が、可能性がある」へ続く

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