コラム

「広告」から「クリエイティビティ」へ【ACCプレミアムトーク】

【座談会】ACCの進化は第2フェーズへ 久保田和昌氏×山口有希子氏×藤井久氏

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「クリエイティブ×テクノロジー」で問われる本質

山口:昔は製品を広めるためにCMを打ち、そのことで世の中を動かしていました。今は世界でも、「ブランドパーパス」は何かということが問われています。その企業の立ち位置であったり、どういう価値を世の中に出していくかを設計し、世の中に伝えていかなければならない。すべきことのレベルが上がっていますよね。そうした中でコミュニケーションを考えると、メディア環境も変わっているし、クリエイティビティ、デザインがとても重要になってくる。さらにテクノロジー、体験……まあ難しくなっていますね(笑)。

久保田和昌 氏

久保田:むちゃくちゃ難しいですよ。以前は「マス」と言っていればよかったのが、デジタルが入ってきて「デジタル×マス」となり、そこにデジタルと親和性の高い体験型が入って「デジタル×マス×リアル」と。かと思えば「テクノロジー×デジタル×マス×リアル」と、これだけ掛けなければいけないとなって、企業として持たなければいけないことが多くて大変です。

山口:テクノロジーは日進月歩でどんどん変わりますし、大変ですね。

藤井:当社(博報堂)では、「クリエイティブ×テクノロジー」を略して「クリテク」と呼んでいます。新しく立ち上がってくるテクノロジーをキャッチアップしながら、これをどう使っていけるのかとすべてチェックしていかないと遅れてしまう。知らなかったでは済まされないんですね。逆に、チェックしたテクノロジーに掛け合わせる「クリエイティビティ」はなんだろうと、すごく考えるようになる。テクノロジーによって、「クリエイティビティ」が浮き立ってくるわけです。

山口、久保田:わかる、わかる。

藤井:クリエイティブは、例えば人とブランド、人と社会の接点をつくることが大きな役割の一つです。人がどう感じるのかと想像する力が、テクノロジーを人がどう使うのか、どんなメリットを得るのかと考える力になる。「クリエイティブ×テクノロジー」というのは、「クリエイティビティ」の在り方を問いかけているような気がして。

山口:本質に戻る感じがしますね。メディアの種類が増えて、テクノロジーも増えて、手段がたくさんできたけれど、結局のところ何を伝えますかと。また人の心を動かすとは、人に行動を起こさせるということは、どういうことなのだろうと。

久保田:深く掘れば掘るほど、そこにしか行きつきません。先日、嶋田三四郎君(2017年度メディアクリエイティブ部門審査委員)と話していたのだけど、テクノロジーはさまざまあるけれど、すべては手段だと。もちろんよく勉強する必要があるけれど、まさに最後に行きつきたいところは、「自分たちが大切にしたい人たちに対して、どんなメッセージが届いて、どう受け止められて、目標に届くか」ということ。

その時のコンテンツというか、クリエイティブの本質は“バック・トゥ・ザ・ベーシック”。いつの時代に生きている人も、何かに感動したり、感動することを求めているという点では同じです。

今、こんなにもいろいろなことが起きている世の中で、それをなおさらエッジ鋭く感じてもらわなくては。惑わされることなく、そこの一点でいかなあかんと思います。

山口:根幹は変わらない、けれどそれを伝えるアイデアが変わっている。行動様式とか情報処理の仕方とか、とくに若い人たちは全然違います。“バック・トゥ・ザ・ベーシック”と伝え方の工夫と、どちらもやらなければいけません。

久保田:“How to say”のところですね。生活者ごとに違うわけだから。魅力を伝えると一口に言っても、押しつけがましければ伝わらないし。どうやって伝えるかを考えなければ、伝わらない。“Why to say”から始まって、“What to say”“How to say”という順番は変わっていません。クリエイターの発想から、言葉とビジュアルと映像の三位一体で、どうクリエイティブを伝えるのか。“How to”の部分ですが、広義で言うコンテンツをいかにつくるかに尽きます。

藤井:さらにアートと産業の関係ですね。そもそも「人間とは何?」「社会とは何?」と人間に対する問いを持つということは、言うならばアートなわけです。アーティストはどのように世の中をとらえているのか、企業と発想は同じなのか、違うのか。自分たちの事業を見直したり新しいところに踏み込んで行く時に、自分たちとは違う立ち位置の見方で捉え直して事業に落とし込んでいこうという動きすら出てきています。

昔はアートと言えば絵画や彫刻というとらえ方だったのですが、アートと産業が融合することで、“そもそも”を考える機会になっている。ACCはそういったものが集まってくる場なので、お互いに「そういう捉え方があるんだ」「発想があるんだ」と横目で見ることができて、それだけでも勉強になります。

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