デジタルマーケティングの黎明期である2000年代は、マーケターがデータ分析に求めていたのは主にコスト面での「効率化」でした。近年はデータを追うことでお客さまの「個」を捉えてより深く理解することに関心がシフトしています。その手段としてデジタルマーケティングを用いるという流れがより明確になったと感じています。
まずは社内のデータに着目せよ
購買手段が劇的に多様化する中、顧客像を一元的に把握することは難しくなっています。そんな中でも正しい顧客理解を目指してデータを利活用しようとする際に、私たちが重要視しているポイントは3点あります。
ひとつ目は、まずは自社がすでに保有しているデータに取り組むのが先ということです。直接集めたデータには、自社の顧客がどんな人たちなのかを理解するための重要な手がかりが込められているものです。その分析がマーケティング施策のベースになります。
2つ目に、自社のデータで足りない部分を補うために社外のデータを使う際は、それぞれのデータの特性に応じて選ぶ必要があります。
データにはそれぞれ得意分野があるため、目的や自社データとの相性を見極めて利用すれば大きな相乗効果が期待できるのです。一例ですが、当社の扱うキャッシュレスデータは“購買行動の変化”を捉えるのに強いという特性があります。お客さまの購買行動が時間軸でどう変化したか、業種や商品をまたいでどう変化したか、行動範囲がどう変化したか。当社のカード会員様の購買履歴を月次で統計化して追うことができるため、素早く継続的にお客さまの動きを知ることができます。
求められる「想像力」
3つ目はデータの読み解き方について。データそのものはあくまでも数字でありファクトです。
マーケティングの本質はその先にあり、例えば2つの媒体を見比べて、どちらの方が顧客の反応がいいかを論じるだけではなく、反応の傾向や変化、反応してくれる人の属性などを細かに分析した上で顧客像を導き出し、次のアクションの示唆につなげていく、ある種の「想像力」が必要です。この想像を怠ると、「反応がいい顧客にはDMなどの案内を送っていい」と短絡的に考えて不快な案内をしてしまうなど、ブランド毀損につながりかねない打ち手を講じてしまう危険性があります。
データを扱う、分析する人材についても、従来のような「AIのメカニズムに精通している」「数値を読み解いてグラフ化できる」といったタイプだけではなく、小売に精通した人、事業企画の経験者、全く別種のデータ同士を比較できる人など、より多様な人材が揃うことでさらなる価値が発揮されるのではないでしょうか。
人材採用や育成も含め、データ活用には継続性が欠かせません。それこそが真に手応えのあるマーケティング施策につながるのだと考えています。
三井住友カード
データ戦略部長
白石 寛樹 氏
三井住友カード
データ戦略部 部長 代理
細谷 友樹 氏
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