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コラム

「つなぐ課」でつないだもの

はじめまして、神戸市の長井伸晃です。

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経常的業務を持たない遊撃部隊「つなぐ課」へ

さて、みなさんは公務員に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか。

私自身、実際に神戸市で働くまでは「安定」「9時5時」「堅い」といったイメージを少なからず持っていましたが、これまでの14年間のキャリアを通じてまったく違うイメージを抱くようになりました。

私のキャリアを簡単にご紹介すると、大学卒業後に新卒で神戸市に採用され、生活保護のケースワーカーを2年、人事給与の制度担当を6年経験したのち、係長昇任と同時に新規ポストであるICT(情報通信技術)関連部署に配属され、4年間を過ごしました。その時のミッションは、「ICTを活用した市民・事業者との協働による地域課題解決」。それまでICTには一切縁も関心も無かったのですが、なんとこれが現在の活動やネットワークにつながるターニングポイントになりました。本当に何がきっかけでどうなるかわからないものです。

当然のことですが、課題解決のためには、その対象となる地域課題(ニーズ)をしっかり捉えたうえでアプローチしなければ的外れな施策になってしまいます。しかし、ICTの部署にいるとどうしてもテクノロジーやサービスといったシーズに目が行ってしまいがちだったので、とにかくニーズに近い市民やコミュニティの中に飛び込むことを心がけていました。たとえば、街中で開催されているワークショップやマルシェイベント、商店街の若手経営者の方々の集まりなどに積極的に参加しました。

参加した、「こうべイクメンの日2017」のイベントにて。(新型コロナウイルスのまん延前です)。

公務員には、その立場の特性上、仕事を通じて自分たちが働く街が持つ「強み」と「弱み」を知るチャンスがたくさんあります(というか、自ら率先して知りに行く必要があると思っています)。

「強み」は、例えば、自然や産業、住みやすさなどその街が持つ魅力や可能性、そしてその街を愛し支える人。「弱み」は、その街が抱える地域課題でしょうか。いや、見方を変えれば強みになる可能性があるかもしれません。

世界的にさまざまな分野でイノベーションが起こりつつある中、人々のくらしが変われば、地域課題も多様化・複雑化していきます。より一層その「強み」と「弱み」を知るチャンスを逃さず、しっかりと本質から考え、理解することが大切だと感じていました。

そんな中、2019年4月、神戸市に「つなぐ課」が創設されることを知りました。地域課題に対して組織一体となって対応することができるよう、これまでの「縦割り行政」を打破することを目的とした、市長直下の組織です。まさにそれまでの活動の発展型としてチャレンジしてみたいと、迷わずつなぐ課への異動希望を出しました。

ありがたいことにその希望が叶い、肩書はどこかで聞いたことがあるような「特命係長」。経常業務を持たない、いわゆる「遊撃部隊」です。毎月2回の市長・副市長とのランチミーティングでの議論をもとに、担当する課題が決まります。

市長・副市長とのランチミーティング「つなぐ会議」の様子(新型コロナウイルスのまん延前です)。

つなぐ課に求められたものは、「課題解決型アプローチ」。市民目線・地域目線という観点を常に意識しながら、課題を発見し、関係する部署や市民や地域団体などをつないで、課題解決に導くことでした。

どんな人たちが「つなぐ課」で働いているの?

当初のメンバーは、私をあわせて10人、職種も一般行政・土木・造園・農業・衛生監視・消防と多岐にわたり、役職も課長・係長が混在していますが全員がフラットという特殊なチームです。それぞれの個性や得意分野が活きるように、課題ごとに様々な組み合わせでチームビルディングされ、パラレルにプロジェクトが進行していきました。

日常業務を持たないという点がやはり特徴的であり、課題が浮上してきたまさにそのタイミングから、機動的かつ集中的に取り組むことができる環境が整備されていました。

私はまず初めに、市長から課題提示があった「ひきこもり支援策の検討」を担当することになりました。生活保護のケースワーカーの経験もあったため、その経験も活かせるではないかと手を挙げました。この課題には3名で取り組み、課題の実態をつかむため、ひきこもりに関連する機関・団体を徹底的に当たり、取材を続けました。そして、その取材を踏まえた関係部局への政策提案から、ワンストップの総合支援窓口となる「神戸ひきこもり支援室」の設置につながりました。

その後、シェアリングエコノミーやeスポーツの活用など、一見すると行政っぽくない取組みも手掛けさせていただくことになりましたが、それらで得た学びについては次回以降にご紹介できればと思います。