イングレスに見る「位置ゲー」の可能性
知る人ぞ知る話ではありますが、ポケモンGOの開発元であるナイアンティックは、既にイングレスというポケモンGOの兄貴分に当たる位置情報ゲームで、様々な企業タイアップを実施しています。
例えば、イングレスではローソンが日本でいち早くスポンサー企業として名乗りを上げて話題になりました。ローソンの1万を超える店舗が、イングレスのゲーム内で重要なスポットとなる「ポータル」になることで、プレイヤーはゲームをしていると自然とローソンの近辺を通過することが期待されるというわけです。
実際にイングレスのプレイヤーの中には、「どうせコンビニに寄るならイングレスにスポンサーしてくれているローソンによろう」という思考回路になる人も少なくないようで、具体的な数値は明らかにされていないものの、集客への効果も評価されているようです。
さらに分かりやすい成功事例が伊藤園の事例でしょう。
伊藤園では、2000台の自販機をゲーム内のポータルにする形でスポンサードを実施。自販機で特定の商品にシールが添付され、クオカードやゲーム内アイテムを入手できる仕組みを提供することで、イングレスのユーザーによる購入を促進することで、事前に予想していた数倍の売上を達成することに成功しています。
丁度、先週の土曜日には、東京で大規模なイングレスのイベントが開催され、お台場の特設会場を中心に1万人以上のユーザーが参加するという大変な盛り上がりを見せていました。
イングレスは、そのSF的で独特な世界感から、なかなか一般ユーザーにとっては敷居が高いゲームだとも言われていますが、そのイングレスで1万人を動員できているわけです。子どもから大人まで認知度が高いポケモンであれば、さらに大勢の人々が「動く」可能性が高いというのは容易に想像できるでしょう。
仮想世界のインセンティブにより、実際の世界のユーザーが特定の場所に「動く」ということは、当然店舗や施設にとっては非常に魅力的な集客手段になる可能性があるということになります。
従来の店舗の集客は、割引クーポンやイベントなどの現実社会のサービスやインセンティブをチラシやダイレクトメールで案内して、顧客を誘引しようとすることが常識でした。イングレスやポケモンGOのような位置情報ゲームは、そこに全く新しい集客手法を提示してくれているわけです。
前回のコラムでは、マーケティング施策の「量」と「質」の議論をご紹介しましたが、ある意味テレビCMをうって数百万人や数千万人の単純な「量」の認知を獲得するよりも、ポケモンGOやイングレスを使った施策の方が、確実に数百人や数千人の来店という「質」の集客を達成できる可能性があるとも言えます。
まずはマクドナルドとポケモンGOのコラボが、実際にどれぐらいマクドナルドの業績アップに効果があるのかが注目されるポイントになるでしょう。
日本のサービス開始が一体いつになるのかはナイアンティックのみぞ知るという状況ではありますが、マーケティングやコミュニケーションに携わる方々は、ぜひ一度試してみられることをおすすめしたいと思います。
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