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コラム

企業トップが語る“次世代リーダー”の育て方

「いい意味での“仕事の丸投げ”が人を成長させる」――トレンダーズ 岡本社長に聞く

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良い思いつきをビジネス化する専門部署を設ける

――そういう経験をスタッフに積んでほしいということですね。

そうですね。経営やビジネス全般については経験が大切なのですが、今のネットの状況に合わせた新しい事業、サービスをつくらなければいけないとなると、ネットマーケティングやテクノロジーの進化についていけるのは、若い世代の人たち。だとすれば、そこについては、その分野に強い若い世代がたくさん経験して引っ張ってほしいと思いますね。

そうして、知識をどうビジネスに結び付けていくかといったことを自分で経験して、失敗を重ねても最終的に何らか形にする。その時に初めて自信ややりがいが得られます。やはり経験が一番の教師なので、上司になんでも聞いて、道筋を立ててもらってから「ここからここまでやっておいて」という仕事の進め方では絶対に力は身につかない。言うなら、仕事を丸投げされるくらいがちょうどいいと思いますよ(笑)。

――それは、いい意味で“丸投げ”ですね。そうして、社員に成長を促すための経験を積ませるために行っていることはありますか?

以前は、新規事業のアイデアを募っていましたが、現在はそこから一歩進んで、事業計画に落とし込むようにしています。単に「こういうのがおもしろいと思う」だけではなく、そこにどういうマーケットがあり、ターゲット、競合はどこなのか。また、どうして当社が勝てると思うのか、といったことをちゃんと考えるために、事業開発の部署を作りました。そのほかに、社員全員で参加するようなアイデアコンテストに近いことも何度か行っています。

だいたい、アイデアというのは「いいこと思いついた」といった、感性的なものであることが多いと思っています。ただ、その感性を実際に具現化してビジネスにして、いろんな人に使ってもらうためには、やはり現実的なアクションプランや、論理的なビジネスプランがしっかりしていなければいけない。今後は、そうした具現化を担える人材を育てていきたいですね。

――つまり、コンテストで出てきたいいアイデアを専門の部署でビジネスに落とし込むということですか?

事業開発部門では、いつもアイデアを出すようにしていますが、多くのアイデアを集めるようコンテストの機会を設けていました。しかし、そこから先に進めるには、アイデアをプロジェクトに落とし込む部門がないと難しい。そもそも、アイデアを出した人は、ほかに自分の仕事を抱えていますから、「言いだした人が結局一番大変になる」となっては尻込みしてしまう。そういう状況を変えたいと思っています。

やはり、ベンチャーに入社した人の多くは、経営というか、自身が中心になってビジネスを立ち上げ、大きくする経験を積みたいはず。それをどういう順番で経験させようかを考えていて、それをスタートさせたところです。事業開発部門のスタッフについては、ケーススタディをしたり、他社のビジネスモデルを分析・検討したりして、「成功パターンがどこにあるのか」というのを教えるようにしています。

――そういうことが見える人が増えると、アイデアがビジネスにつながる確率が上がり、「事業化する力」が育つのではないでしょうか。

そうですね。アイデアを出してビジネスプランにして、経営会議にかける。しかし、収益・コストなど全体を考えたときに合わなければ通らないのは当たり前のこと。しかし、えてしてアイデアを考えた人はその意識が薄いので、「いくらアイデアをだしても弾かれてしまう」となってしまうことが多い。

当たり前のことを全員に理解してもらうのは難しいのですが、少なくとも役員以外にも、そうしたことが分かるスタッフがいれば、現場同士で「本当に事業として成り立つのか」を話し合うようになる。ベンチャーは意外と事業化の部分のシミュレーションが弱いことが多いので、そこを強化して、本当の意味での事業家を育てられればと思います。

――「こういう力を付けてほしい」と思うことはありますか?

「自社はこうありたい」「自分はこうありたい」ということと、しっかりと時代の流れを捉えて、世の中に必要とされるものを作るためにはどうすればいいのか、ということをもっと考えてほしいですね。私は、当社を、半永久的に必要とされ、クライアント企業や会員の皆さまから「なくなったら困る」と思ってもらえるような明確なメリットを提供できる会社にしていきたいと思っています。

そのためには、30年後、50年後、会社が残っていくには、「今、流行っているものは何か」といった一過性のものだけではなくて、全ての人とは言わないまでも、一定の人たちに愛され続けるものを作っていく必要があります。だからこそ、大きな視点で世の中の流れを捉える目が必要なのです。
その視点を多くの社員が持てば、立場の上下ということではなく、ある人の考えやアイデアに対して「それならもっとこうした方がよいのではないか」と、皆でブラッシュアップしていくような雰囲気が生まれてくると思います。

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