ショッパー・ベース・デザインへの取り組みは早ければ早い方が良い
「リテール3.0」時代では、メーカーや小売業は、ショッパーが欲しがるものなら、商品・時間・場所に関係なく、なんとかして売らなければ、ビジネスが成立しないことになってしまいます。昨今語られるようになったオムニチャネルリテーリングの背景には、このリテール3.0という、小売業からショッパーへのパワーシフトが存在しているのです。
では、このショッパーへのパワーシフトに、メーカー、小売業はどう対応していけばいいのか。そのヒントが、ショッパー・ベース・デザインにあります。リテール2.0までの時代は、メーカーと小売業はいわば主導権を争う相手でした。しかしこれまでの連載で伝えてきたように、ショッパー・ベース・デザインは、メーカーと小売業が共同で取り組むものです。
つまり、両者が手を携え、お互いの強みを生かしながらショッパーに対応していくことが、新しい商機の創出につながっていくのです。
だからリテール3.0時代においては、メーカーと小売業がともにショッパー・ベース・デザインによる「売り方のイノベーション」を繰り返して新しい基軸をショッパーに示し続けることが、時代に合致したモノの売り方になっていきます。一方で、もしこれに取り組まなければ、極端かもしれませんがメーカー、小売業とも、ビジネスを失う事態になると言っても過言ではないのです。
上の図は、メーカーがショッパー・ベース・デザインによってもたらされることと、これに取り組まなければどうなるかを対比したものです。
ショッパー・ベース・デザインに取り組むと、長期的には、メーカーにとって値引きの原資となる販促費や商品を置かせてもらうためのスペース費やリベートといった対小売業への支出を抑える効果が生まれます。それは、ショッパー・ベース・デザインへの投資が、自社商品だけでなく小売業の該当カテゴリー全体の純増利益を生み出します。
逆に取り組まなければ、利益が増えないまま支出が続く結果になります。利益が増えないまま支出が続くと、自ずとメーカーはブランドのエモーショナルなベネフィットを確立するためのマーケティング活動といった対消費者への支出を抑制しなければならず、ブランドの価値を維持できなくなり、ブランドイメージは低下します。
このように見て来ると、ショッパー・ベース・デザインへの取り組みは、単に売り場や売り方を改善するにとどまらず、ビジネス全体のイノベーションにつながっていくことが理解いただけると思います。
「新しい売上を作る「売り方のイノベーション」~買物客の購買行動を、売り場で操作する~」バックナンバー
- 最終回 売り方のイノベーションとオムニチャネル(2015/4/16)
- メーカーと小売業がWin-Winの関係で売り方のイノベーションに取り組むには?(2015/3/26)
- 米国成功事例② P&GがTargetをビューティケアカテゴリーの「絶対行きたいお店」に変革した売り方のイノベーション(2015/3/13)
- 米国成功事例① スーパーで売れた「スターバックスコーヒー」とは?カテゴリーも活性化させた売り方のイノベーション(2015/2/26)
- デート成功の秘訣は、ショッパーのディマンドとインサイトが出発点。(2015/2/12)
- メーカーと小売がWIN—WINとなる「ショッパー・ベース・デザイン」はこうして生まれた(2015/1/29)
- 買い物客の購買行動を操作するとは?米国 乾電池売り場の劇的改善(2015/1/15)
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