―――権八さん、それ普通に街にいるパパのコメントですよ(笑)。
次は、プランナー権八成裕に聞きたいのですが、権八さんのクリエイティブ自体にお子様の存在は何かしら影響ございましたか?
権八:うーん、間違いなくありますね。
よくミュージシャンとかアーティストで、子どもができて作風が変わった、とか言うじゃないですか。元々は僕も「そんなの偶然でしょ」ぐらいに、ちょっと斜に構えてたんですけど、もうばっちり影響受けちゃいましたね(笑)。少し世界の見え方が変わってしまうというか。
映画やドラマでよく「せめてこの子の命だけは助けてください!」的なベタなシーンありますよね。子どもが生まれた今、まさに自分がその通りの気持ちに余裕でなってるんですね。自分の中に、そういう未知の感情が芽生えてきて、ああ、俺の心は遺伝子に操作されてるのかもなぁ、でもこんな幸せな気持ちなら全然いい!みたいに思ったりして(笑)。
僕はCMプランナーとして、様々な受け手の気持ちをイメージして企画をたてるわけですが、自分に子どもができたことで、これまで人間として経験したことがなかった体験が物理的にもできたし、新しい感覚や気持ちを発見することができました。
例えば普通、「人のうんちまで愛せる」なんてこと有り得ると思わないじゃないですか(笑)。これが自分の子どもだと、「あぁ、くさい!でも、可愛いっ!」みたいな不思議なことが実際に今、起きているんですよ。
自分よりもずっと大切なものが身近にいるというか、この両手の中にいるみたいなことを経験したことで、思考のレーンがもうひとつ増えたというか、レイヤーが一層増えたというか…。
―――なるほど。先ほど、世界の見え方が変わった、って仰ってましたが、子どもができたことで「今の世界」だけじゃなくて、「これからの世界」への目の向け方も変わってくる、なんてこともありますか?
権八:あります、あります。
例えば、このCM、2015年3月にオンエアしたearth music & ecologyの「サーフ編」っていうCMなんですが・・・(PCで動画を見せつつ)
―――このCMを権八さんがプランニングをされていたときは、もうお子様はお産まれになってますか?
権八:まさに産まれる直前と直後ですね。あ、動画始まりますね。
<宮崎あおい「神様っていると思う? 風は僕らに問いかける。この地上の、希望も嘘も夢も破壊も、その全部を、君は愛せる?『心なんて遺伝子の罠だよ。』うつむく僕らに波は問いかける。いつか世界は、一つになれる? アース、サーフ&エコロジー。まるで冗談みたいな青空だ」>
―――なるほどー、清々しいまでにポジティブなメッセージに満ち溢れた仕上がりですね。
権八:はい。「もろに影響を受け過ぎだろ!」と周りから冷やかされましたけど(笑)。
もちろん、企業のCMとして世の中の多くの人に共感をしてもらうことが大前提なのですが、ちょうどこの時、政治的にも社会的にも日本のムードがなんか暗い刺々しい状況だったんですよね。そんな時、個人的にも、やはりこれからの世界が、どうか良いものであってほしい…と思ったんですよ。そういう願いを、ちょっと青臭いですけど、メッセージに込めてみたくなったんです。
―――僕、おっさんですけど激しく共感してしまいました(笑)。
それでは、最後に、パパになった権八成裕のこれからの野望をお聞かせいただけますか。
権八:自分は40歳の時に子どもが生まれたので、子どもが20歳になった時に60歳です。子どもが物心ついた頃に誇らしく思ってくれるような良い仕事ができているといいな、と思いますね。
例えば、電通の澤本嘉光さんはソフトバンクの「犬のお父さん」シリーズがあるじゃないですか。誰もが知っている国民的CMですよ。澤本さんの娘さん、いいお年頃なので、きっとお父さんが誇らしいと思うんですよね…。犬のお父さんのお父さん。いいなあ、澤本さん(笑)。自分も、子どもが年頃になったときに、そんな仕事ができているといいなあ、と。あ、すみません、めっちゃフツーのつまんない話しちゃって(笑)。
権八成裕(ごんぱ・なるひろ)
CMプランナー。
1974年横浜生まれ。慶應SFC卒。98年電通入社。2003年シンガタ設立に参加。現在に至る。サントリー、SoftBank、earth music&ecologyほか多くの企業のCMを手がける。SMAPの東日本大震災チャリティーソング『not alone〜幸せになろうよ〜』や今年発売のシングル『ユーモアしちゃうよ』などの作詞を担当。自身がパーソナリティーを務める『澤本・権八のすぐに終わりますから』が東京FMにて放送中(土曜深夜1時)。
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権八さんの連載コラム「澤本・権八のすぐに終わりますから。アドタイ出張所」はこちら
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