はてブを狙うなら「小さな承認欲求のミルフィーユ」をくすぐれ
——徳谷さんの記事は「はてなブックマーク(はてブ)」がつきやすい印象があるんですが、秘訣を教えていただけますか?
はてブがたくさんつく記事の分かりやすい特徴は、「議論」が起きるかどうか。インターネットの本質だと思うんですが、匿名で意見を言いたい人がすごく多いんですよね。弊社のコンテンツは、いわゆる炎上的な議論の応酬は避けるようにしていて。たとえば、「目玉焼きには塩派? ソース派?」みたいな対立構造を用意して、平和的に「俺はこっち派!」って言ってもらえる土壌をつくるとか。単純に本質的な良記事であれば、肯定的なコメントが伸びることももちろんあります。
そういう意味では、はてブって「あとで読む」という本来的な機能よりもひと言意見を言うための側面が強いんじゃないかなと。ブックマークするためにボタンを押すとコメントが並ぶじゃないですか。さらにそこに「はてなスター」っていうのがあって、そのスターがたくさん押されているコメントはトップに表示されるんです。ヤフー知恵袋のベストアンサー的な。あれって小さな承認欲求が層になったミルフィーユみたいなものじゃないですか? 自分の意見を言いたくなって、あわよくば、いろんな意見のなかから自分の意見にはてなスターをつけられたい。僕自身もブックマークしてはてなスターがたくさんつくと嬉しいので、人間の承認欲求をうまく刺激する仕組みになってると思います。
最近、カメントツくんという漫画家が、「工場でロボット導入によって人間の仕事が奪われる」という体験談をベースに漫画の記事を描いたんです。
ラフのままでもよかったんですけど、はてブでの反応を得るために、「将来ロボットがあなたの仕事を奪うかもしれませんね」と、読み手が自分ごとになるような要素を強くしたんです。付いたコメントは、「将来自分たちの仕事がどうなるか」という自分ごとの内容が中心でした。こういう意見が生まれやすいっていう構造にすると反響が得られやすいんだなと、試行錯誤を繰り返すうちに気づいてきました。
——関心をもたせて、自分ごと化させて、発言したいと思わせる。
それがはてブの原理というか仕組みなんじゃないかなと。バーグハンバーグバーグの社員も全員はてブが大好きで。毎日「人気がある」「話題がある」記事として紹介されているホットエントリーの記事を習慣的に見ていますし、貴重な情報源として参考にしている部分があります。ずっと見ているとどういう記事がインターネット上で話題になるのかがなんとなくわかってきますし。社内で「この記事おもしろかったよ!」と共有するのは、はてブのホットエントリー記事きっかけだったりしますね。
この感覚が正しいとは言い切れませんが、インターネットの本質を知るという意味では、広報・PRの人こそはてなブックマークを毎日見たほうが良いと思います。見出しを見て気になった記事だけ読むのでも、「これがインターネットで“おもしろい”って評価される記事なんだ」っていう実感の積み重ねになりますしね。
バーグハンバーグバーグ
「ジモコロ」編集長・徳谷柿次郎さん
おもしろ系メディアの代表格「オモコロ」などで常にネットを騒がせているウェブ制作会社・バーグハンバーグバーグの元広報である徳谷柿次郎さん。今は、メディア事業部長に加えて、企業のオウンドメディアの編集長も務めている。パブリシティ活動の目線からもネット記事と向き合っているアベンジャーに、オウンドメディアに取り組む姿勢や、多数の「はてなブックマーク」がつく記事を量産している秘訣を聞きました。
砂流恵介(すながれ・けいすけ)
PRプランナー/ライター
1983年、広島県生まれ。秋葉原でPCショップ販売員の経験を得て、日本エイサーへ入社。宣伝・広報を担当する。2013年12月退社。手段を選ばないゲリラ的なPRを得意とする。
「広報会議スピンアウト企画「ウェブメディアの夜会」」バックナンバー
- 「暇だから◯◯してみる」でヒット記事連発の暇な女子大生さんに直撃「個人でもブランドイメージを普段から意識して」(2016/6/23)
- 地域活性の情報を発信中のブロガー・染谷昌利さんに突撃「業界内の『当たり前』を疑おう!」(2016/5/30)
- 地域密着メディア「灯台もと暮らし」の鳥井弘文さんに突撃!「なぜ『隠居系男子』というブログを書いているんですか?」(2016/3/07)
- 「941::blog」の櫛井優介さんに突撃!「『行ってきたシリーズ』はどうやってつくっているんですか?」(2016/2/03)
- 「ねとらぼ」編集記者・太田智美さんに直撃「広報じゃないと発掘できない話を!」(2015/11/05)
- ブロガーのnarumiさんに突撃!「今こそ、企業は自社サイトをメディア化するべき?」(2015/10/14)
- 新聞記者が、本気でネットニュースの記事を書いてみた (第一夜:朝日新聞社「withnews」奥山晶二郎さん)(2015/4/08)
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