コラム

電通デザイントーク中継シリーズ

落合陽一×菅野薫「『現代の魔法使い』が想像する未来と広告」【後編】

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「魔法の世紀」に、広告会社の仕事はどう変わるか

 

菅野:マス=共通体験が存在しない世界では、広告や広告会社の仕事はどう変わるんでしょうか?

落合:新しいテクノロジーが発明される瞬間が、唯一のマスになるでしょうね。発明によって引き起こされる、「すげえ」「やべえ」という驚きの感覚だけが、共有可能なプラットフォームになる。例えば、オキュラスリフトを発明すること自体が広告になるということです。
それとは別に、狭い広告=「狭告」は無数に存在します。僕の研究室には、「何か懐かしい気がする風景」をデータ学習型インターネットで合成する研究をしている学生がいたりもするんですよ。

菅野:コンピュータが抽出してきた「懐かしさ」を、もう一回人間が感じ取ってみるということですか?

落合:はい。今まで感性や感覚はクリエイターのインスピレーションで決まっていましたが、実は数式で表せます。となると、その数式にクリエイティブを後からはめ込めばよくなる。コンピュータが感性を計算し、どのクリエイターをアサインするかまではじき出し、その人を現実で探すのが人間の仕事になるわけです。オーディションも、コンピュータが「この作品に最適なのはこの顔」と表示した顔の持ち主を探すのが、キャスティングの人の仕事になるかもしれない。といっても、Facebookの顔写真とマッチングした人に電話するだけでいいんですけどね。

地方自治体の一件5万円ぐらいの仕事も、半自動化のメカニカルターク(機械学習と人力による処理を最適化して組み合わせる方法)で1万件取ってきて5億円の売り上げにする、といったこともできるようになります。電通のような大手広告会社は、そういうサービスを開発して持つようになると思います。

広告会社の一番面白いところは、情報企業であるところだと僕は思っています。人間というコンピュータに、ビジュアルや音声でどうやったら情報をインストールできるかということだけをやってきた企業でしょう。ということは、その情報を制御するシステムも社内に持った方が面白い。グッとくる表現と技術のコンビネーションで、人に刺さる枠組みのエンジンを開発する。グーグルやアマゾンはこういうコンテンツベースのプラットフォームは作らないでしょうから、コンテンツ提供企業や広告のプラットフォーマーがやるべきです。

僕が会社を作るのも、自分が作ったものをどんどん“社会実装”したいと考えているからです。自分のテクノロジーを社会にインストールしていくという、エジソン的な目標です。リサーチ、プロトタイピング、マーケティング…一通り全部できるようになるのが、21世紀の研究者であり、アーティストの活動だと思っています。

電通報でも記事を掲載中


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落合陽一(おちあい・よういち)
1987年東京生まれ。メディアーティスト・筑波大学助教・デジタルネイチャー研究室主宰

東京大学大学院学際情報学府博士課程を飛び級で修了し、2015年から筑波大学に着任。コンピュータとアナログなテクノロジーを組み合わせ、新しい作品を次々と生み出し「現代の魔法使い」と称される。研究室ではデジタルとアナログ、リアルとバーチャル、人と機械の区別を超えた新たな人間と計算機の関係性である「デジタルネイチャー」を目指し研究に従事している。著作に『魔法の世紀』(PLANETS 刊)・『これからの世界を作る仲間たちへ』(小学館 刊)がある。音響浮揚の計算機制御によるグラフィクス形成技術「ピクシーダスト」及びフェムト秒レーザーの計算機制御によるグラフィクス形成技術「フェアリーライツ」が経済産業省「Innovative Technologies 賞」受賞、IPA認定スーパークリエータ、 Prix Ars Electronica 栄誉賞/ Laval Virtual Award グランプリ/Asia Digital Art Award優秀賞 / WIRED CREATIVE HACK AWARDグランプリなどその他国内外で受賞多数。2015 年、日本人個人として、ノーベル賞受賞者の中村修治以来二人目となる World Technology Award の IT Hardware 部門を受賞。ホログラム技術のピクシーダストテクノロジーズCEO、ジセカイ株式会社取締役、電通ISIDメディアアルケミスト、など産学連携にも力を入れている。

 

菅野薫(すがの・かおる)
電通 CDC/Dentsu Lab Tokyo グループ・クリエーティブ・ディレクター/クリエーティブ・テクノロジスト

2002年電通入社。データ解析技術の研究開発業務、国内外のクライアントの商品サービス開発、広告キャンペーン企画制作など、テクノロジーと表現を専門に幅広い業務に従事。2014年に世界で最も表彰されたキャンペーンとなった本田技研工業インターンナビ「Sound of Honda /Ayrton Senna1989」、Apple Appstoreの2013年ベストアプリに選ばれた「RoadMovies」、東京オリンピック招致最終プレゼンで紹介された「太田雄貴 Fencing Visualized」、国立競技場56年の歴史の最後の15分間「SAYONARA 国立競技場 FINAL FOR THE FUTURE」企画演出など活動は多岐にわたる。JAAA クリエイター・オブ・ザ・イヤー(2014年)/ カンヌライオンズ チタニウム部門 グランプリ / D&AD Black Pencil / One Show -Automobile Advertising of the Year- / London International Awardsグランプリ / Spikes Asiaグランプリ/ ADFEST グランプリ / ‎ACC CM Festival グランプリ / 東京インタラクティブ・アド・アワード グランプリ / Yahoo! internet creative awardグランプリ/ 文化庁メディア芸術祭 大賞 / Prix Ars Electronica 栄誉賞 / グッドデザイン金賞など、国内外の広告、デザイン、アート様々な領域で受賞多数。

 

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