コラム

藤村厚夫のメディア地殻変動

ディスプレイ広告で稼ぐ時代が終わる? スマホのユーザー体験が突きつける現実

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ディスプレイ広告で稼ぐ時代が終わる?

昨年、日経新聞が買収を発表して話題を呼んだ、英国の老舗新聞「Financial Times」は、技術的な取り組みにおいて先進的だ。同サイトではサイトリニューアルプロジェクト「Next FT」を進めているが、その中で、ページ表示速度を、数多くのJavaScriptコードを削減するなどして、従来の14秒から1秒以内とする目標を掲げている。

同社は、Webページの表示速度が、結果としてメディア収入にどのような影響を与えるかという実験も行い、その結果を公表している(「A Faster FT.com: How Slow Websites Damage Publishers’ Revenue」)。

老舗新聞といえば、米国「Washington Post」も、アマゾンCEOのジェフ・ベゾス氏の経営下で技術投資に熱心だ。同サイトは、この1年ほどで、ユーザー規模の点でリードしていたNew York Timesらを抜き去るほどの勢いで成長している。

図3 Washington Postが開発したモバイルWebアプリ。アプリばりの高速表示や非同期表示などが特徴だ

同社は200名ものエンジニア部隊を組織し、AMPを活用した高速な「モバイルWebアプリ」を最近リリースした。同社によれば記事の表示はついに、80ミリ秒と1秒を切るまでに高速化を果たした。スマホのChromeブラウザで同サイトにアクセスすれば、読者も体験できる。オフライン時にも記事表示ができるなど、まさに“アプリ”なみのWebサイトだ(「With lessons from Google, The Washington Post has brought its page load speed down to milliseconds」)。

「たかが記事の表示速度」のように聞こえるが、これら老舗メディアが、従来のディスプレイ広告満載によるマネタイズ戦略を大転換するという代償を払ってまで、モバイルにおけるユーザー体験の改善に取り組んでいることが分かるはずだ。

読者によく読まれるWebページをつくり、そこにディスプレイ広告を多数配置して稼ぐという、長く続いてきたメディアのマネタイズ戦略の終わりが近づいている。

では、次にやってくる広告とは、マネタイズ手法とはどのようなものなのか、改めて論じることにしよう。


藤村厚夫
スマートニュース 執行役員 メディア事業開発担当

90年代を、アスキー(当時)で書籍および雑誌編集者、および日本アイ・ビー・エムでコラボレーションソフトウェアのマーケティング責任者として過ごす。
2000年に技術者向けオンラインメディア「@IT」を立ち上げるべく、アットマーク・アイティを創業。2005年に合併を通じてアイティメディアの代表取締役会長として、2000年代をデジタルメディアの経営者として過ごす。
2011年に同社退任以後は、モバイルテクノロジーを軸とするデジタルメディア基盤技術と新たなメディアビジネスのあり方を模索中。2013年より現職にて「SmartNews(スマートニュース)」のメディア事業開発を担当。

 

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